第九話 哄笑する赤
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ツの目は、ボス攻略よりも――SAOクリアよりも攻略組プレイヤーのほうに向けられている。あの男の姿を見たことはないが、KoBの行動にはそれを匂わせるものがあるような気がするのだ。
「厳しい戦いになるな……」
俺は確信して呟いた。
決して大声ではなかったものの、沈黙したこの場では全員にしっかりと聞き取れたようで、沈黙がさらに重くなったような気がした。
ため息を一つ。そして続けて、今度はあえて全員に聞こえるように言った。
「じゃ、もういっそ今日は諦めて帰る? 俺としちゃ、どっちでもいいし」
俺の投げやりな言葉に、その場の全員が視線を向けてきた。
「どーせ、このゲームをクリアできる可能性は低いし、今更一日二日遅れたとこで問題ねぇだろ?」
「ジル、それは――」
カズラが口を挟もうとするが、それを一瞥して黙らせた。
大袈裟に腕を広げて、口元を吊り上げる。
「そもそも、俺みたいなレッドはこのゲームがクリアされようがされまいが、どうでもいいんだよね。そのほうが色々と都合がいいし? 別に邪魔するほどでもないけど、まあ精々頑張って? みたいな」
くつくつと笑うと、何人かの鋭い視線を感じられた。
俺はそれを無視して、さらに楽しげに笑みを深める。
「しかも、数が足りてねぇからって監獄から引っ張り出しておいて、全員びびってっし。これなら、むしろラフコフに協力して皆殺しにしたほうがマシだったかねぇ。ってか、ここで全員ぶっ殺すか?」
「調子に乗らないで、『赤い洗礼』」
ここで口を挟んだのは、予想通りアスナだった。彼女は以前出会ったときよりもずいぶんと冷たく睨む。
「私たちはここにいる時点で、覚悟はできています。このゲームをクリアして、生き残った全員を現実に帰還させる。そのために、ここで捨て石になっても構わないわ」
「捨て石ね……」
周囲からの鋭い視線の中、俺は片目をすがめる。
「ならやってみなよ。ここにいる手前、最低限の援護はしてやるからさ。死なない程度に」
くるりときびすを返して、ボスの間の巨大な扉に近づいていく。横を通りすぎる際に殺気を向けてきたDDAメンバーに挑発的な笑みを返してやる。
そして俺は扉に手を突くと、それを押し開いた。
「ほら、びびってないでさっさと行きなよ」
「言われなくとも分かっています」
アスナは頷くと、号令を出して先陣を切っていく。ほかのプレイヤーたちもそのあとに続き、ヤケクソ気味な雄叫びを上げてボスの間へ突入して行った。
そんな中、シュミットがなにもかも分かっている様子の表情を向けてきたので、苦笑を返しておいた。
そして最後に、カズラが通り抜け様に唇を動かしていた。
一人残った俺は、肩をすくめた。
「――ったく、なに勘違い
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