SAO編
episode7 忘れ得ぬ想い2
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ベルの強敵だった。ボスのレベルが同クラスとすれば、今の俺のレベルの八十三では全く足りていないだろう。
だが、俺は冷静ではなかった。
頭のネジは、とっくにとんでいた。
ここまで話を引っ張ったのだ。何らかの報酬は有るだろう。
それに、ソラに会うためのこの戦いで死ぬのならば本望だ。
デュエル表示と、減っていくカウント。
それに合わせて、浮かぶように水面上に佇んでいた死神の女が、その俺の身長の数倍はあろうかという巨大な鎌を振りかぶる。その目が、整った顔が、戦闘に向けて鋭いものになる。思えばこの世界で、ここまで完全な人型のMobとの対戦は、これが初めてだ。それが吉と出るか凶と出るかは、分からないが。
「…さあ、来い」
構えた拳を握りしめ、敏捷値を戦闘用に引き上げる。
ゼロになるカウント。
……瞬間、俺の胴体の高さを、彼女の視線が水平に薙いだ。
反射的に俺が自身の体を一気に沈ませる。と同時に、死神がまるで瞬間移動のように目の前に現れる。振りかぶられた大鎌が、かがめた俺の体を掠めるように通過する。風切り音で分かる、凄まじい勢い。喰らえば恐らく、俺の左腕の《フレアガントレット》でも一刀両断だろう。避け続けるしかない。
だが。
「……おおおおっ!!!」
この手の大ぶりな武器に、先読みのしやすい人型モンスター。
相性は、悪くない。
引き絞っていた拳を、その胴体に叩きこむ。絶望的な僅かな量減少するそのゲージは、もう見ない。倒すまで戦い続けるなら、与えたダメージを見る意味はないからだ。と同時に、全力のバックステップで距離を取る。直後振り下ろされる大鎌が、その位置に叩きつけられて地面が大きく抉られる。
ゆらりと鎌を持ちあげる、碧眼の死神。
その顔には、もはや最初にあった感情は無い。ただただ、目の前の俺を倒す、モンスターのそれ。
だが。
「……ははっ。ははは…」
その研ぎ澄まされた存在は、美しかった。
美しいと、思った。
徐々に外周から水平線へと沈みゆく太陽を背に、佇む巨大な鎌を携えた死神。
その姿は、恐らく俺の命を奪うだろう相手にしては、贅沢過ぎるほどに、美しかった。
これがいわゆる死神だとするなら、このキャラをデザインした奴はずいぶんとロマンチストなのだろう。死者を甦らせようなんて冒涜的な夢を追いかけるプレイヤーが相対する、悪魔の契約を交わす相手が、こんなにも美しいなんて。
再び、彼女の目線が、俺の体を捕える。
なぞる軌道は、袈裟斬り。
鋭くサイドステップする俺の体を、大鎌が掠めていった。
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