暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
SAO編
episode7 忘れ得ぬ想い
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り口と言われるこの大河の噂と、ここがゲームの世界であることを考えれば、意味が無いと断言はできない。

 いやむしろ、その可能性は高くすらあるだろう。このゲームのクエストは数限りなく多く、それをこなしてきた俺の勘は「ここでの分岐点」…裏ボスの存在を告げている。

 (…だが……)

 もしこの推理が間違いだった場合、失うのは、この指輪。
 もう二度と取り返すことのできない、かけがえのない品。

 (……どうする…)

 鼓動が、速くなる。

 (……どうする…)

 呼吸が、苦しくなる。

 クエストの始まりの言葉を思い出す。


 ―――大切な人の思い出の品を投げ込むと、もう一度会える…


 俺は。俺は。
 俺の左手が、ゆっくりと動き、ポーチから取り出すのは。


 ―――もう一度、会える…


 二人の思い出のアイテム…結婚指輪、《ブラッド・ティア》。ラフコフ討伐戦の後、ソラの指輪は見つからなかった。おそらくあの場に居らず、その後の行方の知れないPoHが持ち去ったのだろう。だから、これは俺の分の結婚指輪だ。

 これを。
 これを、投げ込めば…

 死者は、蘇らない。そんなことは分かってる。それが出来るなら、そもそもこの世界は存在しえないのだから。一年ほど前のクリスマス、一部のプレイヤーの間で囁かれた《蘇生アイテム》が存在しなかったことで、それは確定とされた。今更それを否定する気はない。

 これを投げ込んだとして、どうなるというのか。

 俺の頭の一方で、理性をつかさどる部分が冷静に語りかける。
 このアイテムを思い出に、これから先に進んでいくべきだ、と。

 その瞬間、俺の頭のもう片方で、感情を司る部分が圧倒的な大音量で叫ぶ。
 ソラに会いたくないのか、と。

 左手が、動く。

 ああ、そうだ。
 俺は、ソラの死から立ち直ってなんかいなかった。

 ソラが死んで、ラフコフを討って。
 ほとんどの知り合い達は俺が元の、ソロプレイだった頃の俺に戻ったと思っていた。

 俺自身も、戻れた…戻ってしまったのだと思っていた。
 終わったなどと言いながらも、ソラの死を悼みつつも、今までの俺に戻ったのだと。

 だが、そんなこと、出来無かった。
 忘れるなんて、俺には出来るはずが無かったんだ。

 今更思い知った。

 そうだ。俺は今、神様とやらが現れて、百人の命と引き換えにソラを生き返らせてやろうといったら、迷うことなくそれに従うだろう。百人が千人でも、一万人でも、…俺の命でも、同じことだ。何だって差し出すだろう。

 たとえ、この指輪だって。
 迷いは、ない。

 意志を固めた瞬間、左手は鋭く振り抜かれ。
 鮮血の涙の名を持つ
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