SAO編
episode7 忘れ得ぬ想い
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
り口と言われるこの大河の噂と、ここがゲームの世界であることを考えれば、意味が無いと断言はできない。
いやむしろ、その可能性は高くすらあるだろう。このゲームのクエストは数限りなく多く、それをこなしてきた俺の勘は「ここでの分岐点」…裏ボスの存在を告げている。
(…だが……)
もしこの推理が間違いだった場合、失うのは、この指輪。
もう二度と取り返すことのできない、かけがえのない品。
(……どうする…)
鼓動が、速くなる。
(……どうする…)
呼吸が、苦しくなる。
クエストの始まりの言葉を思い出す。
―――大切な人の思い出の品を投げ込むと、もう一度会える…
俺は。俺は。
俺の左手が、ゆっくりと動き、ポーチから取り出すのは。
―――もう一度、会える…
二人の思い出のアイテム…結婚指輪、《ブラッド・ティア》。ラフコフ討伐戦の後、ソラの指輪は見つからなかった。おそらくあの場に居らず、その後の行方の知れないPoHが持ち去ったのだろう。だから、これは俺の分の結婚指輪だ。
これを。
これを、投げ込めば…
死者は、蘇らない。そんなことは分かってる。それが出来るなら、そもそもこの世界は存在しえないのだから。一年ほど前のクリスマス、一部のプレイヤーの間で囁かれた《蘇生アイテム》が存在しなかったことで、それは確定とされた。今更それを否定する気はない。
これを投げ込んだとして、どうなるというのか。
俺の頭の一方で、理性をつかさどる部分が冷静に語りかける。
このアイテムを思い出に、これから先に進んでいくべきだ、と。
その瞬間、俺の頭のもう片方で、感情を司る部分が圧倒的な大音量で叫ぶ。
ソラに会いたくないのか、と。
左手が、動く。
ああ、そうだ。
俺は、ソラの死から立ち直ってなんかいなかった。
ソラが死んで、ラフコフを討って。
ほとんどの知り合い達は俺が元の、ソロプレイだった頃の俺に戻ったと思っていた。
俺自身も、戻れた…戻ってしまったのだと思っていた。
終わったなどと言いながらも、ソラの死を悼みつつも、今までの俺に戻ったのだと。
だが、そんなこと、出来無かった。
忘れるなんて、俺には出来るはずが無かったんだ。
今更思い知った。
そうだ。俺は今、神様とやらが現れて、百人の命と引き換えにソラを生き返らせてやろうといったら、迷うことなくそれに従うだろう。百人が千人でも、一万人でも、…俺の命でも、同じことだ。何だって差し出すだろう。
たとえ、この指輪だって。
迷いは、ない。
意志を固めた瞬間、左手は鋭く振り抜かれ。
鮮血の涙の名を持つ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ