SAO編
episode7 スランプと限界点3
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だ。
そして今現在の俺のレベル、八十三。
既に違和感は、戦闘に直接の支障を来すほどになっていた。
確かに、俺の敏捷値は、数値的には上昇を続けている。その数値は、アインクラッドでも間違いなく最高峰のそれだろう。だがそれは…当然と言えば当然だが…扱う術者の能力があってこその数値的ステータスなのだ。本人の力が伴っていなければ、それらは単なるハリボテの強さに過ぎない。
本人の力が追いつかなければ、それを使いこなすことはできない。
恐らく、ここが俺の体の…俺の脳の反応速度の、限界だったのだ。
敏捷値は、いわばレーシングカーの最高速度なのだと、俺は思う。一直線に走り続けるならまだしも、カーブを曲がるためには、その力を操作するための反射神経と判断力が不可欠。つまり戦闘時、俺の脳神経の反応速度が、敏捷値で加速した体を操作できるだけの、俺本人の力が必要となるのだ。
その力が、俺にはなかった。
ここが、限界だった。
先日行われた、キリトとヒースクリフの公開決闘を思い出す。確かに勝ったのはヒースクリフだったが、俺が心を惹かれたのはキリトの力…キリトの、反応速度だった。
神速で繰り出される『二刀流』のソードスキル。
十を軽く上回るその連撃を、奴は全て完璧にブーストして見せていた。
恐らくあれが、この世界で求められる反応速度なのだ。あの力を持つ者だけが、このアインクラッドの最前線を走り続ける権利がある。いわば、『勇者の資格』とでも言えばいいのか。それが、キリトを始め、アスナやヒースクリフ、クラインやエギルには有り…俺には無かった。
恐らくもう十層も登れば、俺はソロプレイはおろかパーティー狩りさえ覚束なくなるだろう。俺がその先、どうやって生きていくか…それはまだ、俺には思いつかない。そもそも、俺がそこまで生きていられる保証もない。
だが、そのことは、俺の心を掻き乱すことは無かった。
その時がいつ来ても…たとえ今、この瞬間に死が訪れても、俺はそれを受け入れるだろう。
終わってしまった、そんな俺なら。
(…とりあえず、)
もう何度したか分からない思考を打ち切って、俺は夕暮れで黄金に輝く森を駆け抜けた。
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