芽生える気持ち
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周りにいる人も気立てのいい人ばかりのようだ。
「そうなんだ。今まで羽月君が無理してるように見えてたから、それを聞いて少し安心したわ」
「無理はしてないよ。それに、家でもできるトレーニングをしているからね」
やることをちゃんとやっているところが、羽月君らしいなと思った。
「なら心配しなくても大丈夫そうね」
「僕は大丈夫だよ。それより、朝田さんのお母さんは、どう?」
「うん……。殆ど変わってないわ」
「そう、だよね……。でも、僕の方はそろそろ何かが掴めそうな気がするんだ」
もしかしたら、と思ってはいたけど、予想していたよりもずっと早くて驚いた。だからどうにも信じられなくて、疑ってしまう。
「本当に?」
「うん。結構心身症について理解が深まってきたからね。それを治すための方法をもう少し調べれば、なんとかできそうかな」
「そうなんだ……。よかった。ありがとうね、羽月君」
「まだ治るって決まった訳じゃないから、お礼なんていいよ。そもそも、お礼を言ってもらうためにやってる訳でもないしね」
──また謙遜してる。
私は無意識にそう思っていた。だって羽月君にお礼を言うと、いつもお礼はいらないと言われてしまうからだ。
そしてそのことに我慢できなくなった私は、自分の考えを話すことにした。
「私がお礼をしたいからしてるだけだよ。それに、お礼は素直に受け取るべきだと思うわ」
すると羽月君は顔に驚きの色を顔を浮かべた。こういう顔は初めて見たから、なんとなく得した気分になった。
「そうだね、うん。……じゃあ、どういたしまして、かな?」
「それでいいわよ」
そう言って、互いに笑みを浮かべる。
私はそれから、思ったままのことを言った。
「本当に羽月君って凄いね」
「そんなことないよ」
「あるよ」
私は咄嗟にそう返していた。そしてそのまま、自分でも制御できない感情に任せて続ける。
「だって、自分のためでもないのに、こんなにも努力ができるんだから」
すると羽月君はゆっくりと首を横に振った。
「買い被りすぎだよ。今やっていることだって、自分のためなんだから」
私はその時、どうしても何かを言わないといけない気がして、素直な思いを口にした。
「それでも、私の心が軽くなっているわ。それに、本当に自分のためになることだけしかやらない人は、そんな風に言わないと思うわ」
「……朝田さんは、優しいね」
「羽月君の方が優しいよ」
私は思ったままのことを告げる。
「……ありがとう」
返ってきたのはその一言だけだったけど、今まで以上に羽月君に近づけた気がした。
「うん。どういたしまして」
そこでふと時計を見ると、帰らないといけない時間が近づいていた。
「あっ……。私、そろそろ帰らないと。羽月君は今日も残るの?」
「
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