SAO編
one day 生命の碑にて
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。
まだ夕日の沈む前の街中、ほかに人のいない状況既にマスターに達した『隠蔽』スキルを悠々と貫いてくるという驚異的な能力とプレイヤースキルだが、この男…SAO最強と名高い『聖騎士』ならば、それも不可能ではないのだろう。
「直接会うのは、四十七層以来かな?」
相変わらずの真鍮色の瞳が、俺を見つめる。
そこに宿る色は、俺には理解できない。
少なくともそこには、悲しみや絶望があったようには見えない。
憂いこそあれども、それを「仕方ない」と流せる者の目。
理解できない。
いや、「したくない」の間違いか。
目を逸らす。
逸らした視線の先にある、『生命の碑』。
その石面に刻まれた名前が、無感情に俺を見上げる。
「あんたは…」
絞り出すように呟く。
ヒースクリフの態度は、普段の俺だったら気にせず流しただろう。
そんなやつもいるだろう、で済ませたろう。
だが。
「あんたは…」
俺は、冷静ではなかった。
冷静であってはいけなかった。
それは、俺のために喜び、怒り、泣き、笑った彼女への、ひどい裏切りに思えた。
だから俺は、精一杯に俺らしくないことを為す。
「…ソラに、ずいぶんと入れ込んでいた。…ボス攻略の時や俺のいない時にギルドを訪ねて、熱心にKoBに勧誘してたと聞いてる。…そんなアンタは、ソラの死に、なんとも思わないのか? それもこれまで死んできた連中と同じ、「一人のプレイヤーの死」に過ぎないのか…?」
ヒースクリフの顔は、見えない。
だから、俺の言葉に何を思うのかはわからない。
「……彼女の死は、…そんなに取るに足らないっ、そんなっ」
「彼女は『勇者』の一人だったろう」
ヒースクリフは、唐突に俺の言葉を遮った。
「おそらく彼女はこの先に私の『神聖剣』と同等の『ユニークスキル』すらも獲得して、この世界を結末へと導く戦士の一人だっただろう。だからこそ私は彼女を『攻略組』に…KoBへと勧誘したし、その動向に注意を払ってもいた」
遮ったまま、朗々と歌い上げるように言葉を紡ぐ、『聖騎士』。
視線だけを向けると、ヒースクリフは俺の視線を追うように『生命の碑』を見つめていた。
そこに宿る感情も、やはり俺には読み取れない。
「…だが、それはこのVRMMOであるSAOにおいて、『勇者』は不変のものではない。この世界では生まれた瞬間からの『勇者』はいないし、…『勇者』であれば最後の戦いまで生存が約束されているわけでもない。……であるなら、このような結末も、残念ながら起こりうる事態なのだ」
視線の先は、『生命の碑』を…そこに刻まれたソラの名前を見ているのか。
あるいはそこに
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