8 「受難のち衝撃の出会いからの確信」
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う意味でも、密かに感謝していた。本猫に言うと調子に乗るから絶対に言わないが。
最後に冷たい水を頭からかぶって泡を落とすと、すぐ近くで「きゃあっ」という声が聞こえた。女の子の、明らかに悲鳴だ。
咄嗟に川から片足を出して前を見ると、真っ赤になって口元を抑えている赤毛の少女。よく見ると赤っぽい金髪だ。リーゼロッテ(推定)だろう。ふるふると震えている。なんだ、怪我はないのか。安心してその場でつっ立ったナギは、少女の様子がおかしいことに気づく。
その視線は、ナギの顔へ行ったり胸元をさまよって慌てて下にいき、また更にあわてて顔に戻り…を繰り返している。最終的にはぐるぐると目を回して、手で顔を覆ってしゃがみこんでしまった。
「ふっ……!」
「ふ?」
「服をっ。服を着て下さい!!」
「へ? ……ああ」
そこでようやく自分が下着1枚なのに気づく。長いこと、たとえ家の中を裸で歩き回っても気にも止めないルイーズや、はっきり言ってナギの性別などどうでもいいと思っているデュラクと一緒に暮らしてきたため、そういう認識が甘くなったのだ。要するに、鈍い。それに、どうせ肝心な一番大切な部分(どことは言わない)は隠れているから、まあいいだろう。減るもんでもあるまいし。それよりナギにとって最も隠すべき場所は顔である。片手でしっかりマスクが付いていることを確認すると、ほっと息をついた。
一応気にしているようだから、と少女に背を向け、濡れないように岩の上に積んであった着替えを取り出した。紺色の着流し。これも布を買って四苦八苦しながら自分で作ったものだ。といっても、数年も経てば大分慣れたものだった。襦袢の上からそれを着、白い帯を慣れた手つきで結んで、最後に青い羽織を着れば完成。パパッと着られるのが便利で、彼は普段これを私服としていた。靴も草履である。足袋も実は作っていたが、今はない。ぬかるんだ道に足袋で歩けば、白い布が一発で泥まみれになってしまうからだ。
「おまたせ」
おまたせと言いつつ、ぶっちゃけ一番どきどきしていたのはナギの方である。
心の準備が終わらないまま少女と(しかも自分は裸で)バッタリ。
(こりゃ一体なんのフラグだよ……)
あれから一言もはなさずうつむく少女がしっかり自分の後ろを付いてきているのを確認すると、自分の家に先導しながらナギはため息をついた。首に手ぬぐいを巻いて、道中がしがしと頭をふく。いかにもお風呂上がりといった感じだが、彼はここ7年間、熱々の風呂に入ったことはなかった。当然だ、渓流に住んでいるのだから。ああ、米が食べたい。降りればすぐユクモ村があるが、対人恐怖症ぎみの青年が観光客で賑わう村に行けるはずもない。
ちなみに先に述べたルイーズが入って歌を歌っているのは、メラルーが入れる程度の大きさの鍋の中である
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