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椿姫
第三幕その一
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それはそうですが」
「全てはヴェールに覆われていても」
 ジプシー達の歌は続いていた。
「神は全てを御存知なのです」
 そう歌いながらその場から去って行く。そして後から今度は闘牛士が姿を現わした。
「ほう、マタドールですか」
「ええ」
 フローラはガストーネの言葉ににこりと笑って頷いた。
「趣きを変えまして」
「我等ははるばるマドリードから来ました」
「何の為に」
 客達は歌い踊るマタドール達に対して問うた。
「騒ぎを楽しむ為に。パリは素晴らしいところと聞きましたので」
「確かにその通りです」
 彼等はそれを認めた。
「その楽しさに心打たれてお話したいことがあります」
「それは一体」
「我々の恋のことです。我々は今まで恋をしてきました」
「どのような恋を」
「スペインの情熱的な娘達を。この娘達は言ったのです」
「何と」
「一日で五頭の牛を倒して欲しいと。もしそれができたならば妻になると」
「それはまた凄いお話で」
「そして我々はやりました。それぞれ一日で五頭の牛を倒しました。そして娘達を妻としました」
「それは素晴らしい」
 素直に賛辞の言葉を贈った。
「それが闘牛士なのか」
「そう、闘牛士は愛と戦いを好むもの」
 彼等はそう歌った。
「他にも楽しむものがあります」
「それは何ですかな」
「酒です」
 彼等はニコリと笑ってこう言った。
「そしてカードを。これから如何でしょうか」
「是非共」
 客達はそれに頷いた。
「それでは御一緒に」
「はい」
 こうして客達はマタドール達と共にカードと酒に入って行った。先程のジプシー達も出て来てそれに加わる。正装の紳士や淑女と風変わりだがみらびやかな服の者達が混ざり合う。そして彼等は共に楽しむのであった。

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