第三十話 テオドラ
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だな。そう思うと妙に親近感が湧くよ」
私の言葉に会議室に笑い声が満ちた。皆が苦笑をしている。
「幸い彼はローエングラム公に協力的です、敵対しているわけではない。今度の戦いでも共に戦うと言っている。彼を積極的に受け入れ新帝国を安定させるために利用すべきです」
「……彼が危険だとは思わないのか、メックリンガー」
ローエングラム公が顔を顰めながら問いかけてきた。
「大変危険です、何と言っても宇宙一の根性悪でロクデナシなのです。しかし愚かではありません。こちらと敵対すれば損だという事は理解しているはずです。我々にとっても彼を敵に回す事は得策ではない、そして協力し合えばお互いに利が有る事も分かっています。協力は出来るでしょう……」
扱いは難しいだろう、飢えたトラ並みに危険だし年老いた狐のように狡猾だ。だが扱いを間違えなければ問題は無いはずだ……、溜息が出た、何故だろう……。
帝国暦 489年 7月14日 フェザーン アルツール・スウィトナー
ぞろぞろと十人ほどの男達が連れられてきた、全員後ろ手にされ手錠をかけられている。そしてその両脇を黒姫一家の男達が警備していた。捕えられた男達の表情が冴えないのは落胆の他に催涙ガスを吸った事による影響も有るだろう。あれを吸うと咳、くしゃみ、涙、嘔吐が酷いからな。とてもじゃないが抵抗など出来ん。
最後尾には恰幅の良い中年の男の姿が見えた。あれがルビンスキーか……、写真では見た事が有るが実物は初めてだ。精彩は欠いているが抜け目なさそうな表情をしている、油断ならない顔つきの男だ。これで精気に満ちていればふてぶてしい印象の男になるだろう。こっちを見たな、おやおや表情が厳しくなった、気付いたか……。
それにしても旨い所に隠れたもんだ。政府所有の秘密地下シェルターのさらに下に隠れ家を用意するとは……。黒狐の巣籠りか、もっとも隠れてどうするんだって話も有るな。安全かもしれんが表には出られない、影響力は限定されるだろう。素直に降伏して協力する、それによって影響力を残す、そうは考えられなかったものかね……。
目の前にルビンスキーが来た。
「ルビンスキー自治領主、いや自治領はもう無いから元自治領主かな。お初に御目にかかる、黒姫一家、アルツール・スウィトナーだ」
「……」
おいおい、無視かよ。相変わらず表情は厳しいな、答える余裕もない、そんなところか。
「私を裏切ったのか、ドミニク。先にルパートを裏切り今度は私を裏切ったのか」
「裏切ったんじゃないわ、見限ったのよ」
男の声は熱を帯びていたが女の声は気だるげだった。どうでも良い、そんな感じだな。相手に対する関心など微塵も感じられねえ。
「自分より劣る人間の事は理解できるって言っていたけど、そうでもないみたいね
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