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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第三十話 テオドラ
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私の言葉に皆が驚いた様に視線を向けてきた、ローエングラム公もだ。これほどまでに注目された事は一度も無い、突き刺さる様な視線が痛い、だが言わねばならんだろう。

「以前、イゼルローン要塞のケスラー提督と話した事が有ります。黒姫の頭領はヴァンフリート割譲条約によって辺境星域と反乱軍を経済的に結び付けて一つの経済圏を作ろうとしているのではないかと。それによって辺境星域を発展させようとしているのではないかと……」
私の言葉に皆が頷いた。この事は皆も知っている事だ。

「しかし認識が甘かった、いや黒姫の頭領を過小評価していたのかもしれません」
「どういう事だ、メックリンガー」
ローエングラム公が問いかけてきた。口調も厳しいが視線も厳しい、何ともやり辛い事だ。

「彼はローエングラム公による宇宙の統一を強く進めています。政治的な国境を無くそうとしているのでしょう。そして彼自身は経済的な面での国境を無くそうとしているのではないかと思うのです。彼の真の狙いは帝国、フェザーン、反乱軍の経済を一つに繋げ、それによって経済面で宇宙の統一を図ろうとしているのではないでしょうか。その大きな流れの中で辺境星域を発展させようとしている……」
彼方此方で唸り声が、“なるほど”という声が聞こえた。ローエングラム公も何度か頷いている。

「経済的な利が有れば敵対していても協力は出来る、ヴァンフリート割譲条約を見ればそれが分かります。黒姫の頭領は宇宙の統一は政治的な統一だけでは不十分で経済的な統一により利を生みだす事が必要と見た、小官にはそのように見えます」
「……」
皆が黙って聞いている。ケスラー提督、卿と話した事は無駄ではなかった。卿の見識が今の私の発言になっている。出来れば今此処で卿と話したいものだ。

「帝国、フェザーン、反乱軍の企業を手に入れたのもそれらの企業を使って交易を推し進めようと考えているのでしょう。黒姫の頭領が利を生み出せばそれに続くものが必ず現れる、新帝国内で帝国、反乱軍、フェザーンの経済交流が活発になれば新帝国が経済的に一つに繋がる、そう考えているのではないかと思うのです」
「……」

「統一後には通商を管轄する省庁を作りボルテック弁務官を担当者にすべしと進言した事もその表れだと思います。……ボルテック弁務官、卿がその立場に就いた時、経済界で最も頼りになる人物は誰かな、黒姫の頭領ではないかな?」
私の問いかけにボルテック弁務官が苦笑を浮かべた。

「確かにそうですな。彼には色々としてやられています、思う所は有りますが頼りにはなるでしょう。メックリンガー提督の言う通りです、彼との協力関係が必要不可欠になると思います」
「安心して良い、してやられているのは卿だけではない、我々も同じだ。つまり卿と我々は有る一点を通じて仲間だと言う事
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