第6話 強ビリビリ
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帽を着た若者を気配で察すると、声をかける。
「ええ、時間通りです」
菱井と呼ばれた男が、歩いて天野の前に登場する。
「さすが、菱井重工業の御曹司というところか」
「元ですよ、元。
財閥の運営よりも、機械製作にのめり込んで勘当された身ですから」
菱井と呼ばれた男は、薄手の作業着のポケットか煙草を取り出すと口にくわえる。
「そうかい。
俺のように、姓を捨てても結局縛られる場合もあるだろうに。
まあ、こっちとしては翼が台数確保できたら問題ないさ」
天野は、菱井の言葉にどうでもよいといった口調で言葉を返すと、着地した物体を確認する。
菱井を守るかのように取り囲む白い物体は、10メートルを越えていた。
白い物体は、人の形をしているが、人とは異なる特徴がある。
背中に生えた、大小2つずつの翼である。
外側にある大きな翼は、広げると10mにも達し、小さな翼も5m近くになる。
翼を構成する羽の先端からは、白く輝く素粒子がかすかに漂っている。
これは、天野が設計した機械を浮遊するための素粒子であり、物理学と超能力とが融合した際に見いだされたものである。
これまでも、この素粒子を使用して飛行機等の浮遊補助装置として使用されたことはあるが、単独で浮遊させることを可能にしたのは、天野の才能によるものであった。
ただし、採算を度外視した装置であり、サイキックシティといえども量産化は厳しいというのが、菱井の出した結論であった。
天野が「翼」と名付けたその機体は、独自の兵装とともに、対地戦闘能力を有していた。
「そうですか。
それでは、制御装置をお渡しします」
菱井は、作業帽を脱ぐと、天野に手渡す。
「スーツに作業帽か。
わかってはいたが、似合わんな。
俺も、作業服がよかったのかな」
天野は、少しだけ自嘲ぎみに話しながら帽子を被る。
「脳波パターン青。
天野統治であることを確認しました。
コード:45DF3に基づき、管理者権限を菱井邦夫から天野統治に変更します」
帽子から、天野の脳波に直接女性の声が響く。
「どうですか、天野さん。
仕様書通りの性能ですが?」
「……。
そうだな」
天野は予想通りの事だったため、反応は鈍かった。
「心配するな、菱井。
計画通りだ。
サイマスターが干渉しない限り、問題ない」
天野は、菱井の不安そうな表情をみて説明する。
天野の試算では、計画が失敗する状況はサイマスターグルーが直接介入する場合だけであると考えていた。
一方で、天野はそのような事態は起こり得ないと考えていた。
サイマスターグルーの目的は、次のサイマスターを育成することだけであり、それ以外に関心は持っていない。
牧石とグルーが以前1度だけ接触した
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