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とある誤解の超能力者(マインドシーカー)
第2話 敗北
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の到着を待ちわびていた。


天野が副所長室に入ってから10分後、北川副所長が入室した。
「またせたかね、天野君」
残暑の厳しさにも関わらず、白衣の下に紺のスーツを纏った北川が、天野に声をかける。

「待ちましたよ、北川副所長」
天野は、ソファーから身を起こすと、北川に向き直る。

「それは、すまない」
北川は、表情をわずかに曇らせると、手にしていた用紙を天野に手渡す。
「お疲れさま。
君の新天地での活躍を期待しているよ」
北川は、用事が終わったとばかりに、自分の机に座る。

「……、解雇予告書だと……。
どういうことです!」
手渡された用紙を読み上げた天野は、北川に向けて怒鳴った。

「天野君。
記載内容のとおりだよ」
北川は冷静に答える。

天野が受け取った、解雇予告書には次の内容が記載されていた。

研究中止によって、雇用を打ち切ること。

当初予定していた研究期間中に支払う予定であった報酬を支払うこと。

研究中に発見した研究結果や技術に関する特許権はすべて天野が権利を持つこと。

一般的な、解雇予告書に比べて優遇されている内容が記載されているが、天野は納得してはいなかった。

「なぜ、解雇されるのだ!」
天野は、北川に迫った。

「君の研究が不要になったからだ。
もともと、この研究所に君の研究は不要だった」
北川は、あくまで冷静に天野に対応する。
「なんだと!」
「君の研究は、エキドナの本来の使用を隠蔽するために必要だったのさ。
別に、他の研究でもかまわないのさ」

「それでは、あいつらはどうなる!」
「あいつら?」
北川は眉をひそめた。
「しらばっくれるな、磯嶋とあのクソガキの事だ!」

北川は、天野の具体的な言葉によりようやく理解すると、ゆっくりと答えた。
「・・・・・・ああ、磯嶋君のことか。
磯嶋君は、草薙研究所に出向して、ここにはいない」
「なんだと……」
天野は驚きの表情を隠せない。
天野は、磯嶋が自分の代わりに研究所に残っていると確信したからだ。

「君のいう、クソガキというのが、牧石啓也君というのであれば、彼も研究所にはいないよ。
今頃、学校にいるのでは?」
北川は、どうでもいいような口調で天野に教える。

「研究対象を放置していいのかよ?
あのガキは、二人目の全問正解者だろ?」
「たしかに、牧石君は全問正解した。
だが、それは『特異な条件下でのみ使用できる能力』であって、一人目の時とは事情が異なる。
……現時点で、彼は研究対象から外れている」
「……なんだと?」
天野は自分の考えを再修正する。
天野の計画は、提案する前に解雇という形でつぶされた。
そして、天野の敵である磯嶋と牧石はここにいない。

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