第二幕その五
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に会った時からそうだった。だから無理はしないでくれ、いいね」
「ええ、有り難う」
心の奥底から嬉しかった。だがそれでももうしなければならなかったのだ。それが彼女の心を一層締め付けた。
「ところで一つ話しておきたいことがあるんだ」
「何かしら」
「この前僕に一通の手紙が来たよね」
「少し前のあれかしら」
そう言えば思い当たるふしがあった。
「そう、それなんだけれど」
「何の手紙だったのかしら」
「僕の父からの手紙でね」
「御父様の!?」
「!?」
ヴィオレッタが突然驚きの声をあげたのでアルフレードは怪訝そうな顔をした。
「どうしたの?」
「えっ!?」
「そんなに驚いて。確か僕の父のことは何も知らない筈だけれど」
「ま、まあそうだけれど」
ヴィオレッタはまた誤魔化した。誤魔化さねば成らない自分自身が嫌であった。
「それでどんな内容だったのかしら」
「手紙のこと?」
「ええ。何て書いてあったのかしら」
「君との交際のことだよ」
「そうだったの」
内容はわかった。もう聞くまでもないことであった。
「随分と厳しいことが書いてあったよ。けれど気にすることはないよ」
「どうしてかしら」
「父はわかっていないんだ、君のことを」
彼はかなり楽天的であった。
「けれど一度会ったら変わると思うよ」
「一度会ったら」
「そうさ、きっとね」
彼は甘かった。若さ故の甘さであった。だがそれには気付かない。若さ故に。
「アルフレード」
ヴィオレッタはそんな彼に対して言った。
「何だい?」
「いえ」
言おうとしたが止めた。
「実はね」
だがそれでも言おうとする。
「うん。どうしたんだい?」
「少しここを離れたいのだけれど」
やっと言えたがそれは誤魔化しの言葉であった。
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