第7話 終業式
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嶋は、その頃になると、弟は既に死亡したものと思っていた。
あるとき、研究所に牧石啓也が研究所に進入したとの連絡があった。
磯嶋は、牧石を見ても特に何も感じなかった。
だが、磯嶋が牧石の生年月日を確認したところ、弟の生年月日と一緒であることに気づいた。
ひょっとしたら、との思いで磯嶋が牧石の情報を確認すると、牧石が引き取られた孤児院は、テロリストの首謀者の1人が最後に立ち寄った場所の近隣であり、牧石が引き取られたのは、首謀者が逮捕される少し前だった。
「生き別れの弟ではないか」
だが、磯嶋が、その事実を確認できなかった。
遺伝子情報を確認すれば、確実に結果が判明する。
しかし、遺伝子検査は、犯罪調査等の特別な場合を除き、法律により禁止されている。
それは、「とある魔術の禁書目録」の設定のように、血液採取により研究が外部に漏れる可能性があるからではない。
現在のサイキックシティにおける超能力開発において、血液学的な医療行為は行われていない。
超能力研究において、超能力と遺伝との関係はほとんど否定されているからだ。
磯嶋は、確認することができなかったが、牧石が実の弟であると確信していた。
だが、牧石は磯嶋の想いに気づくことはなかった。
牧石は、転生前の知識が失われているからだ。
もし仮に牧石に転生前の知識があれば、磯嶋を姉として慕っていた可能性はある。
牧石にとって、姉とは別に1人明確な存在がおり、それ以外は姉と思うことはないだろう。
二人の気持ちのすれ違いが、磯嶋の現在の状況を生みだしている。
「……啓也。
私たちはたった二人の姉弟なのよ……」
「それは、違う。
君は天涯孤独の身だ」
磯嶋は背後から聞こえてきた男の声に、反応した。
一瞬、わざわざ突っ込みを入れるために牧石が来たと思ったが、そうではなかった。
磯嶋の前には、スーツ姿の男性が立っていた。
「だっ、誰?
井藤市長!あなたがどうしてここに?」
井藤市長と呼ばれた男が現れた。
敷き詰められた、石畳により照り返す熱気にもかかわらず、涼しげな顔でスーツを着こなしていた。
「君の母親は、君が生まれたときにこの世を去った。
そして父親は、サイキックシティが事実上独立する数ヶ月前に、やはり命を失っている。
血を分けた相手は、もう一人もいないのだ。
磯嶋秋子君、君は孤独なのだよ」
「ど、どういうこと!?
私には、啓也という弟がいるわ!」
磯嶋は市長の言葉に反論する。
「君は、自分が磯嶋一郎の娘ではないことを知っていたようだな。
だから君は、何の疑問もなく彼も自分と同じだと決め込んだ……。
だが、それは誤解だ。
彼は、君にとっての育ての親、磯嶋一郎の実の息子。
君と啓也君は姉弟ではない
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