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とある誤解の超能力者(マインドシーカー)
第4話 黒岩さんはしゃべらない
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、これまでの抑揚のない口調から一転して、人を引きつけるような演説口調へと変化した。
「知っているか?
世界で最初に輸血が行われたのは、西暦1818年にロンドンで行われた。
当時はABO型も知られていなかったため、輸血に伴う副作用や死亡事故も発生していた。
それでも多くの先人たちによる血のにじむような努力によって、現在の安全な献血体制が確立されたのだ。
しかも、麻酔なしでな!」


火野の、「麻酔なしでな!」という言葉に、牧石と黒岩以外の保健委員たちが大笑いしていた。

牧石は、「何がおもしろいのか、ひょっとしたら内輪ネタなのだろうかと」と考える以上に「一樹から聞いた話では、1667年にフランスの医師が青年に羊の血液を輸血したのがはじまり」ではなかったのか、ということを考えていた。

とにかく、火野の言葉でモチベーションが高まった保健委員たちは、登校する生徒たちに対して元気よく、献血の呼びかけやチラシの配布を行っていた。

ちなみに、牧石がチラシの配布中に他の保健委員から話を聞いたところでは、火野の父親が小さな病院を経営しており、父親の書斎に置いてある医学に関係した本から、話のネタを仕入れてくるという。
そして、話の内容に関係なく、最後には必ず「麻酔なしでな!」という言葉を入れるそうだ。



黒岩も、チラシを持って生徒に配布していた。
牧石は、声を張り上げて呼びかけをしながら黒岩の行動を安心して眺めていた。

「……」
黒岩は、急に後ろに控えていた火野の方に向かってゆっくりと歩き出す。
牧石は黒岩の表情が、大きく歪んでいるのを確認すると、黒岩に近づいた。

「……」
「そうか、大丈夫なのだな」
「……」
「無理はするな、今日は帰りなさい。
担任には俺が伝えておく」
「……」
「いいって、俺の仕事だ。
そんなことより自分のことを心配しなさい」
「……」
牧石は、黒岩と火野のやりとりをそばで聞いていたが、黒岩の声は聞こえない。

「牧石君」
「は、はい!」
牧石は、思わず直立不動の姿勢をとった。
「君には、チラシ配布の仕事を手伝って欲しい」
「わかりました」
「鈴科君。
君には、真鍋先生への伝言をお願いする。
休憩時間に改めて謝罪に行く旨も併せて頼む」
「了解しました」
いつの間にか牧石の隣にいた鈴科副委員長は簡潔に答えると足早に校舎へ向かっていった。

その後は、何事もなく啓発活動が終了した。
その後朝のホームルームで担任である、真鍋先生から、黒岩が急遽休むことになったことが伝えられた。


翌日、黒岩は何事もなかったように、無表情に登校したので、クラスメイトのほとんどが気にすることはなかった。

牧石は、黒岩の表情がふだんよりほんのわずかに悪いことに気
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