第4話 黒岩さんはしゃべらない
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手紙に目を通すのに追われているのだよ」
「確かに大変だな」
牧石は目黒に同情していると、目黒が持っていた手紙の一つが誤って床に落ち、手紙の中に入っていた文面と写真が牧石の視界に入った。
写真に移っていたのは、なぜか露出度の高い服装をしている女性の姿であり、視界に入った文章には、お礼に自宅で食事でもしませんかという一文が確認できた。
「そうかい」
牧石は目黒に同情することをやめて、思考を再開した。
ただ、無口であるだけならば、牧石は黒岩を気にすることは無かっただろう。
だが、黒岩が時折見せる表情が、気がかりだった。
牧石が、黒岩の表情の変化に気がついたのはいつの頃だっただろうか。
少なくとも黒岩の状態に違和感を覚えたのは、献血での呼びかけのことであった。
朝のホームルームでの呼びかけは、担任の先生にお願いして時間を確保してもらっていた。
「漫談とかするなよ」
という担任からのありがたい言葉に従って、普通の説明とお願いをしたのだが、黙ったまま牧石の隣にいた黒岩が、一瞬だけ顔をほんのわずかに歪めた。
牧石は、その事実に気がつくと、
「大丈夫?」
と、黒岩に尋ねてみたのだが、
「……」
と、もとの表情に戻りごくわずかに首を上下に動かしただけである。
「それなら、いいんだ」
と、牧石は返事をかえした。
だが、牧石は黒岩を観察するうちに、黒岩が一日に数回顔をかすかにだが表情を歪めることがあることに気がついた。
それは、休憩時間中だったり、長距離走を走り終わった後に木陰で休んでいる時だったり、下校時に廊下を歩いているときだったりしていた。
牧石は黒岩のことを心配していたが、そのことについて再度尋ねることはしなかった。
状況が変わったのは、献血の日の早朝に行われた啓発活動の時だった。
献血センターが用意したチラシ以外に、生徒たちが作成したのぼりや看板を持ち寄って校門前に保健委員たちが集合していた。
牧石は、そこで黒岩の姿をみつけると、
「黒岩さんは、たしか看板の作成担当ではなかったかな?」
と思いだし、質問しようとしたところで、火野委員長が、黒岩に声をかけてきた。
「黒岩君。
なぜここにいる?」
「……」
黒岩は、火野に視線を向けたが、無表情のまましゃべろうとはしなかった。
「まあ、そういうことなら別にかまわない。
チラシの配布作業を手伝ってくれたまえ」
火野は黒岩の頭が上下に動いたのを確認すると、
「これから、最後のミーティングを行う。
と、いっても、事前に決めたことをそのまましてもらえばいい」
火野は周囲を見渡すと、全員が頷いているが表情は硬かった。
「というわけで、委員の表情をやわらげるためひとつ話をしよう」
火野は
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