第4話 投資話
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「ええっと、あなたは?」
「久しぶりですな、牧石くん。
編入試験では試験官をしていましたよ。
覚えているかな?」
牧石は、少し鋭い目つきの男の顔を眺めながら、編入試験の日の事を、思い出そうとする。
確かに、試験会場に入室したときに視野に入った試験官と似ているような気がする。
牧石は試験官を名乗る男に誘われて、近くのファミレスに入った。
研究所の食堂で働く小早川さんが作った食事は大変おいしいのだが、たまには別の場所で食べてみたい。
入店前に、牧石は小早川さんにお詫びのメールを送った。
牧石にとって幸いなことに、給付金が入金されたことで、懐事情は改善されている。
浪費は厳禁だが、一食程度外食してもかまわないはずだ。
「まずは、自己紹介をさせてもらおう」
男は、牧石に一枚の名刺を手渡す。
「羽来 雄二郎だ。
金融コンサルタントをしている」
牧石は名刺に記載された内容を確認する。
肩書きには、「リーディングコンサルティングフィナンシャルマネージャー」と記載されている。
牧石が疑問に思っていることを感じたのか、羽来が説明をしてきた。
「一言で言えば、私には投資能力がある」
「透視能力ですか?」
「ええ、予知能力と金融工学とを融合させることで、新しい投資理論を産み出したのだ」
羽来は、牧石に金融工学の簡単な特徴を説明し、金融工学の弱点である、「想定外の出来事」と呼ばれる理論の前提条件が破綻した場合に生じるリスクを、予知能力であらかじめ回避するという、理論の概要部分を説明する。
「はぁ」
だが、牧石は投資能力を透視能力と勘違いしたことから、羽来の話への理解ができなかった。
もっとも、勘違いしなかったとしても、牧石が理解できたという保証もない。
「まあ、難しい理論を話すのが今日の目的ではない。
君の将来性を見込んで、投資話を持ちかけたのさ」
羽来は、鞄から一枚のパンフレットを取り出す。
「新投資理論により、豊かな生活を目指しませんか」という宣伝文字と、ヨーロッパの古城のような建築物のなかで優雅に生活する若い男女の写真が掲載されていた。
牧石は、自分が「透視」と「投資」を誤認していたことに気がつくとともに、パンフレットの内容を確認していた。
「今回紹介するのは、この投資信託だ」
羽来は、ページを3枚めくるとそこには、「新投資理論により、リスクを完全回避。選ばれた人への最強の投資信託」
と書かれたタイトルと、先ほど羽来が説明した理論の内容。
そして、高い利回りとリスクが生じないことを視覚化するための様々なグラフが記されていた。
「本来であれば、すでに優雅な暮らしをした人たちだけに用意したプランなのだが」
羽来は、これまで
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