レベル2 とうし を してみよう
第1話 転入生
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だからこそ、どうしてグルーはあの結果に満足したのだろうと考えていた。
しかし、答えは見つからないだろう。
磯嶋も同じ事を考えていたのか、別の話を切りだした。
「牧石君、これからどうするの?」
「しばらくは、このままでいたいと思います、磯嶋さん」
「「姉さん」でしょ!
約束を忘れたの」
磯嶋は不満一杯で牧石に詰問する。
「約束は忘れてはいませんよ、磯嶋さん」
牧石は、磯嶋の鋭い視線にも平然と対応した。
「約束は、『本当に感謝の気持ちがあるのなら、私の事を姉さんと呼びなさい』でしたよね?」
「ええ、そうよ」
「確かに、磯嶋さんは、遅刻しそうな僕を車に乗せて、試験会場に送ってくれました。
付け加えるならば、僕が部屋に忘れていた受験票を持ってきてくれました」
「そうよ」
「試験の前日に、僕に睡眠導入薬を飲ませたり、携帯電話をマナーモードにしたりしましたよね」
「……」
「否定するのでしたら、監視カメラの映像を一緒に確認しましょうか?」
「……そうよ」
磯嶋は事実を認めた。
「でも、受験票を忘れたのは牧石君のせいよね」
「たしかにそうです。
磯嶋さん」
牧石は磯嶋に対する呼びかけを改めることなく話を続ける。
「それは、磯嶋さんが「身分証明書があれば不要じゃないかしら?」と言ったからです」
「確かにそう言いました。
でも、私が話した言葉は推測であり、断定ではありません」
「なるほど、そう切り返しますか」
牧石は、磯嶋の言い訳にも平然としていた。
「ですが、予備校に通っていても助成金が受けられる事も、今回の試験に失敗してもいくらでも再挑戦ができることも、話をしてくれませんでしたよね。
福西からメールで聞き出しましたよ。
そのような人に「姉さん」と親しみを込めて呼ぶと思いますか?」
「福西君、裏切ったわね!」
磯嶋は、両肩をふるわせる。
「福西から伝言を受け取っております」
牧石は、静かに読み上げる。
「『磯嶋さん。
俺は、超能力では貴女に協力はしますけど、それ以外のことは貴女よりも牧石に肩入れをします』ということです」
「……」
「〜♪」
牧石の携帯が鳴った。
福西から、追加のメールが来たようだ。
牧石は、反射的にその内容を読み上げた。
「追伸。当然、真菜が一番だけどね」
「……」
「……」
二人の間に気まずい雰囲気が漂った。
「福西め、なんて文章を読ませやがるのだ!」
牧石は思わず携帯電話を叩きつけそうになった。
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