第6話 リラクゼーション
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「トリップですか」
牧石の表情は、磯嶋の言葉を聞いたとたんに険しくなる。
牧石は、「とある」世界で聞いた言葉ではないため、類推するしかなかった。
牧石は「トリップ」という言葉で、薬物の使用による精神の状態変化を連想する。
もっとも、牧石に経験がないため、映像等によるイメージしか思い浮かばない。
あまり、良いイメージが浮かばないが「とある」世界での超能力開発の方法は、薬物投与と暗示と脳波の操作で行われたことを考えれば、納得できる。
能力開発の副作用については、「とある」世界では、大きく取り上げられていないため、牧石は覚悟を決める。
牧石は、おそるおそる、ユニフォーム姿の上に白衣をまとった磯嶋に質問する。
「薬を使用するのですか?」
磯嶋は、驚いた表情で牧石をじっと見つめると、やがて、
「牧石君。
あなたが、いったい何を想像して言ったのかはわからないけれど、基本的にこのセンターでは、超能力の開発に薬物は使用しません」
と断言する。
「えっ」
「昨日手渡した資料のなかに、超能力開発の歴史があれば確認できますが、超能力開発の黎明期において、薬物が使用されていたのは事実です。
しかし、現在は薬物使用による超能力開発の危険性が明らかにされています。
そのため、国際条約により超能力開発での原則薬物の使用は認められていません」
「そうなのですか?」
「まあ、ごく一部の研究機関が新薬開発という名の下に、臨床試験において薬物投与が行われている可能性は否定しません。
それでも、薬物を用いない超能力開発は、既に方法論を確立しています。
ですから、わざわざ薬物を用いる必要はないのです」
薬物ダメ、絶対ということか。
牧石は安堵するとともに、磯嶋に対して神妙な表情を示す。
「……。すいません」
「いいのよ、牧石君」
磯嶋は、気にしてないといった、柔和な表情で、
「超能力への誤った認識は、今に始まったことではありません。
超能力という名称からして、すでに過去の呼称であるといっても過言ではありません」
「過去の呼称?」
「そうです。
超能力開発の基本的な技術が確立した現在、すでにこの能力は、特異なものではありません。
自動車の運転技術ほど、人間にとって一般的ではありませんが、フィギアスケートのトリプルアクセルほど、限定されたものでもありません」
磯嶋は、いたずらっぽい笑みを浮かべると、
「トリップについての、説明がまだだったわね」
といって、話を戻した。
「トリップというのは、精神を超能力が発動しやすい意識下に置くことを言います。
発動しやすい環境は、ひとそれぞれだけど、脳波を調べることで確認することができます」
「脳波ですか?」
再び、牧石は暗い表情を見せる。
「どう
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