第4話 転生をした日
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ていたが、これは、前世で使用していたものと、形状が異なっていた。
そして、破損していたことから、携帯電話から情報を入手する事は出来なかった。
牧石はこれらの事実をふまえて、身分証明書を手渡しながら、記憶喪失になったことを磯嶋に説明することにした。
磯嶋の質問は事務的で、牧石が記憶を失ったことを聞いても、「そうなの」の一言で終わり、手にした用紙挟みの上に置いてある紙に、牧石が答えた内容を記入していった。
今日の磯嶋は、白いブラウスの上に昨日と同じタイプの白衣を身につけていた。
今日の日付については、ベッドのそばにおいてあるコンピューターが表示する内容を確認する限り、前の世界で死亡した日から1週間後となっていた。
「とある世界」の原作開始年がわからないが、それほど差異はないだろうと牧石は確証もなく考えていた。
磯嶋が、質問を終えると、改めて牧石の目を見た。
「なぜ、牧石が警備厳重なこの施設で倒れていたのかわからない。
テレポートや透明化、視認阻害による進入も、超能力探査装置を使えば超能力が使用されたことが確認できるの。
しかし、君が出現した前後には、そのような反応がなかった」
磯嶋は、ためいきをつくと、
「とりあえず、君の身元が確認されるまでの間この施設で保護させてもらうわ。
安心して欲しい、ここの研究施設は、君が心配するような、人体実験は行わない。
まあ、希望するなら紹介するけど?」
磯嶋は、牧石の反応を楽しみながら説明する。
「ここに残ります」
牧石は、首をぶるぶると横に振りながら答える。
「そう。
じゃあ、私がしばらく君の保護者になるわ。よろしく」
磯嶋は立ち上がると、昨日と同じように右手を差し出した。
牧石も立ち上がる。
今日の磯嶋は、ハイヒールを履いていたので牧石の背とほとんど変わらない。
牧石は、まっすぐに磯嶋と視線をあわせながら、握手を交わした。
「とりあえず、今日のところはここまで」
磯嶋が、施設内の地図を手渡し簡単な説明をすませると、磯嶋が立ち上がる。
「お昼にしよう!
牧石君ついてきて」
牧石は、磯嶋から借りた時計を眺めると、正午を少しすぎたことに気づいた。
朝食はとらなかったが、昨夜遅くに夜食をとっていたので、さほど空腹は感じなかった。
それでも、牧石は磯嶋についていった。
研究施設の居住区に設けられた食堂には、磯嶋と同じような白衣を着た人たちが10人程度いた。
その人たちは、磯嶋の姿を確認すると、手を挙げたり、「よう」と声をかけたりしたが、磯嶋についてきた少年について、質問する人はいなかった。
配膳所にいるポニーテールの女性から昼食を受け取ると、磯嶋と牧石は窓際の席に座った。
窓際の席から見える景色は、高い塀であった。
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