第3話 早とちりしたままでの転生
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そして、少年の生活費については、篤志家の老人による遺言で設立された財団が管理運営する資金から、捻出されることになる」
青年は、先ほど自分がつけた青い付箋の張ってある資料を見ながら、説明を続ける。
「君が、勉強をしている間は、生活費や授業料を含めて、十分な支援を受けることができるだろう。
返済についても、俗に言う「出世払い」という設定だから気にするほどのこともない」
青年はほほえんだ。
「どうしても、少年が気になるのなら、超能力の一つに経済的に役に立つ能力があるので、それを活用すればいい」
「それならば、安心しました。
よろしくお願いします」
牧石はとりあえず、衣食住が確保できたことを確認し、転生をお願いした。
青年は、ふと思いついたように質問する。
「そうだ、名前はどうする?」
「名前?」
「転生した場合、身分証明書を一から作成する。
このさい、気に入った名前があれば、その名前に変えたらどうだ?
たとえば、デクス・スターマインとか……」
「プッ」
青年の提案に、牧石は、思わず笑ってしまう。
姿形が典型的な日本人であるのに、わざわざ周囲に興味を持たれるような理由が思いつかない。
気取った名前にして、呼ばれたときの反応が遅くなることで怪しまれるよりは、呼ばれなれている今の名前の方がいい……。
「何がおかしい!」
青年は、これまで見せていた優雅な微笑は消え去り、憤怒の表情へと変貌していた。
「す、すいません。
僕には似合わないと、思いまして。か、神様ならふさわしいかもしれませんが・・・・・・」
牧石は、あわてて言い訳した。
いや、言い訳にもなっていない。
牧石は殺されることを覚悟した。
もう、すでに死んでいるけど。
「そ、そうか。
なら、いいのだ。
すまない、とりみだして」
急に、目の前の青年は、低姿勢で対応する。
「で、では、名前はそのままで」
「わかった」
青年は、テーブルに積み上げた資料をいつの間にか取り出した本棚に詰め込みながら、僕に指示をだした。
「では、そのイスに座ってくれ」
「はい」
青年はいつのまに用意したのかわからない赤いイスに視線を移した。
牧石は、そのイスに座ると青年の周囲に視線を向ける。
青年は、片づけ作業が終了したのか、目の前のテーブル反対側においてある白いイスに座っている。
テーブルの上には、最初に青年が説明に使用した「ぼんさいいじり計画」と書かれてある資料と、手書きで「マインドシーカー」と書かれた分厚い単行本サイズの箱しか残されていなかった。
「それでは、がんばりなさい」
青年の言葉により、僕はイスを中心に光の柱に覆われた。
すると、イスの下の白い地面、光の柱で作られた円の内側部分が黒く塗りつぶされる
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