第二幕その三
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すると彼女の髪と目が青くなっていく。そして話せるようになった。お爺さんが魔法を解いたのである。そのルサールカを思いやる心で。
「お爺さん・・・・・・」
ルサールカもお爺さんを抱き締めた。その目から一条の涙が伝わる。
「帰るね?」
「帰らなくてはならないの?」
「そうだよ」
お爺さんは優しい声で言った。
「だからね」
「・・・・・・わかったわ」
「真に精霊だったとは」
王子は蒼白になって抱き合うルサールカとお爺さんを見ていた。
「こんなことが・・・・・・」
「精霊であったならばどうだというのです?」
お爺さんはその王子に対しても言った。悲しい声で。
「ルサールカは本当に貴方を愛していたのに。貴方は話せないというだけで」
「・・・・・・・・・」
項垂れる。今度は王子が沈黙する番だった。
「これ程にまで責めて。ルサールカは言葉を捨てて貴方のところに入ったのに」
「言葉を捨てて・・・・・・」
「姉や妹達も捨てて。何もかも捨てて貴方の側に参ったのに。それなのに貴方は」
「そうだったのか・・・・・・」
「しかし所詮は」
「さっきも言いましたが精霊だからいいというのならそれでいいでしょう」
また司祭に言い返した。
「ですが。精霊もまた生きていて恋をするのです」
「うっ・・・・・・」
これには司祭も何も言い返せなかった。
「そしてその為には犠牲も厭わないのです。人と同じように」
「人と同じ・・・・・・」
「そうです」
今度は王子に言った。
「同じなのですよ。だから今ルサールカは泣いているのです」
自分の腕の中でさめざめと泣くルサールカに顔を向ける。
「さあ帰ろう。湖の中に」
「けれど」
「もういいんだよ。御前は何も心配しなくていいから」
ルサールカを優しく抱いて言う。
「だから」
「けれど私は」
王子の方を見る。彼と目があった。
「うっ」
ルサールカと目が合い言葉を詰まらせる。背けはしない。だがその何処までも悲しい目に言葉を失ってしまったのだ。
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