第2話 合格発表の会場で
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たところを、聞いたことがない。
しかし、彼女の表情はこれまでに無く、生き生きとして、瑞穂に見せるまぶしい笑顔は、牧石に新たな衝撃を受けた。
恋に落ちる瞬間だった。
想いを寄せる相手を、さらに好きになるなんて。
「合格だ」
瑞穂は彼女の口調の変化に驚くことなく、いつもの表情で答えていた。
「おめでとう、かずき!
まあ、当然か。
私は一樹の、お、……お、お師匠さんですから」
冴嶋は、会話の途中で、瑞穂が冷酷表情に豹変した事に気づくと、急に言葉をとめ、言い直した。
瑞穂は、一瞬だけ表情を厳しくしていたが、すぐにいつものやさしそうな表情に戻していた。
「そうだったな。
まあ、今日は良いけど、高校でも、これまでどおりに接してくれ」
「えー、いいじゃない、かずき」
冴嶋は、瑞穂の腕をつかんで組み付くと、不満そうに、口をへの字にする。
「だめだ、小学校のときのように、いろいろと巻き込まれるのはごめんだ」
「かずきのケチ……」
彼女は瑞穂の腕を組んだまま、不満をもらすが、瑞穂は彼女を無視して牧石の方に視線を動かし話しかける。
「牧石。
合格したのだから、あらためて佳奈を紹介しよう」
冴嶋は、牧石の方を眺めると、頬を染めて瑞穂に絡めていた腕をふりほどく。
「必要ない」
牧石は、瑞穂をにらみつけ、断言する。
「……」
牧石の表情や言葉の変化にいち早く気がついた瑞穂は、急に押し黙る。
「……そうか、瑞穂。
ようやくわかったよ」
牧石は、目の前で見せたふたりのやりとりで確信した。
「?」
「何を言っているのだ」
牧石の言葉に、冴嶋は困惑の表情をみせ、瑞穂は、僕に質問する。
牧石は二人にかまわず、自説を披露する。
「なるほどね。
絶望させるためには、一度持ち上げてからたたき落とすのが効果的だと、誰かが言っていたが、これほどひどいとは思わなかったよ」
「なんの話だ?」
瑞穂は、端正な表情をゆがませる。
「合格した喜びを、一緒に通学できる希望を与えておきながら、仲の良さを見せつけて地獄につき落とす。
すばらしい、シナリオだ。
さすが、一樹だ!」
牧石の表情は、憎悪にゆがんでいただろう。
しかし、牧石は瑞穂に指摘しなければ、この先生きることはできないと確信していた。
牧石が必死になって目指していたものは、すでに友人だと思っていた人の手に渡り、その人は牧石の気持ちを知りながら、がんばっている姿を裏で笑っていたに違いない。
牧石は、そう判断を下した。
「おい、待て。
早とちりだ!」
瑞穂は、牧石の考えを読みとったのか、両腕を牧石の肩において、説得を試みた。
「何が違うのだ、」
牧石は、瑞穂の手をふりほどき背を向ける。
「だから、だから俺たちは、お…
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