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魔術QBしろう☆マギカ〜異界の極東でなんでさを叫んだつるぎ〜
第2話 これだけは伝えておこうかな
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可解さが滲んでいた。
「僕たちは奇跡の代償に魔法少女になってくれと、きちんとお願いしているよ? 実際の姿がどういうものかは説明を省略しているけれど、別に知らなくても不都合のあることじゃないと思うな」
「戦闘によるものならばともかく、たかだか感情の浮き沈みが命に直結する身体にされることが、省略すべき些事だというつもりか?」
 声に怒りがこもる。今目の前に座り込んでいる相手にとって、事実それは些事にすぎないのだろう。60億人以上という膨大な数の内の一個体の生命が失われる可能性が高まることなど、この生物にとっては大した問題ではないのだ。そもそも、魔法少女にした時点で相手に自ら死刑宣告の判を押させているのだから。

「人類は絶望して自分から生命活動を放棄する者が大勢いるだろう? そんな習性を持っていることを鑑みれば、ソウルジェムが絶望で濁れば死ぬことに特別説明の必要があるのかい?」
「人間は、自らの選択を尊ぶ。その選択の権利を剥奪され、絶望したというだけで命を奪われていい道理などない」
 守護者として、選択の余地なく殺戮を強いられてきたしろうだからこそ、その言葉には強い感情が乗せられる。確かに、世界との契約を選択したのは自分だ。しかし、自分が自分でないものとして戦い続ける運命を強要されるとは、あの時は思っていなかった。自分が浅はかだったといえばそれまでだが、それでも納得する気にはなれない。そうだからこそ、しろうは魔法少女たちに魔女という代償を隠して奇跡を売り歩くキュゥべえの姿が認められなかった。

「君の言うことは、本当に理解に苦しむな。ただの精神疾患とは思えない、まるでこの星の人類と話しているようだよ」
 実はその通りなのだが、それを話してやる義理はない。
「私も、虫に理解してもらおうとは思わん」
 苦々しく吐き捨てる。その“虫”という呼び方は、なにも単なる侮辱として言ったわけではない。実際に、このインキュベーターという生物の精神構造は、地球の生物の中では虫に類似点が多いと思えるのだ。群体で1つの意識を共有しているところはアリやハチ等と似通っているし、契約相手をあっさりと犠牲にする冷淡さは交接相手さえ捕食するカマキリに通じるところがある。感情的な行動を見せず、生存本能のみで動いているその様は、正しく知恵のある虫という表現がぴったりだった。

「そうかい」
 虫呼ばわりにもやはり思うことはないらしく、キュゥべえが淡々と立ち上がった。
「それじゃあ、最後にこれだけは伝えておこうかな」
 次の魔法少女候補の名前なんだけどね、と、踵を返しながらもキュゥべえは話し続ける。
(ともえ)マミっていうんだ」

〜続く〜
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