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魔術QBしろう☆マギカ〜異界の極東でなんでさを叫んだつるぎ〜
第2話 これだけは伝えておこうかな
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度目を向けてみればいい。それで過去の己の無知に苛立つこともあるだろう、自己嫌悪も覚えるはずだ」
 しかし、とインキュベーターは続けた。
「無知であるからこそ、かつての自分の姿に何かを見出せることもある。きっと忘れていた何かを、答を得られるかもしれんぞ?」
 そう言って締め括ったインキュベーターの言葉を受け、少女は頷く。
「うん、解ってる」
 そう言った少女の表情は、力強い笑顔だった。

「私は、魔女から皆を守る魔法少女だもの。絶望なんかに、負けたりしない」
「ふ、ならばいいのだがね」
「もう、ちょっとは信用してよ!」
 不満気に少女は言うが、やはりインキュベーターが返すのは皮肉気な言葉だ。
「いや、なに。なんだかんだで君の戦闘経験は多いとは言えんし、色々と不安なのでね」
「もう! それはいっつも先回りして魔女倒しちゃうからでしょ!」
 そう彼女が怒ると、一転してインキュベーターは優しい目を向けてくる。
「だが、君は強い。私の指導にも、挫けずについてきた。君なら、何処へ行ってもそうそう後れを取ることはあるまい」
「え?」
 不意打ちの賞賛に、少女の紅潮した頬が更に熱を持つ。
「も、もう! そう思ってるなら、いちいち皮肉言わなくてもいいのに!」
「いやなに、これからは私が手助けするわけにもいかんのだからね。あまり甘やかすことばかり言うわけにもいくまい?」
「まったく、もう……」
 諦めたような溜息を吐きながらも、少女が浮かべるのは笑顔だった。そして、少女は踵を返しながら外套のインキュベーターに別れを告げる。
「それじゃあ、元気でね、しろう。あんまりキュゥべえと喧嘩しちゃダメだよ?」



投影開始(トレース・オン)
 呪文を詠んだしろうの耳毛に、一振りの剣が現れる。黄金色に輝く、下方に同じ長をした三叉の短い刃を、上方に中心だけ長く伸びたやはり三叉の刃を持つ剣。その銘は“倶利迦羅剣(くりからけん)”。仏道における明王の中心、不動明王が持つという諸悪魔を降伏(ごうぶく)し、一切衆生を煩悩より救うという降魔(ごうま)の利剣。本来は仏尊、神霊に近い存在が持つ剣だが、信仰の伝承上は人間に使われることもあるとされる。そのため、魔力は比較的多めに使うものの投影は可能だった。

 その人々を苦しみから救うという特性から、正義の味方に絶望していた頃には使う気になれなかった剣だが、今は特に抵抗なく手にできる。答えを見つけてからは、我ながら色々なところで変わったものだと思う。微笑を口許に浮かべながら、しろうはその霊剣を振りかぶった。刹那、倶利迦羅剣の刀身が炎に包まれる。それがこの剣の能力の1つ。不動明王の光背である火炎、迦楼羅焔(かるらえん)を宿し、魔に属するものや悪しき存在を焼き払うことができるのだ。

 そ
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