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魔術QBしろう☆マギカ〜異界の極東でなんでさを叫んだつるぎ〜
第2話 これだけは伝えておこうかな
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ら、少女はインキュベーターに恨めし気な視線を送る。それに対し、赤い外套のインキュベーターは肩ならぬ耳毛をすくめて見せた。
「別に競争しているわけではないと思うがね?」
「そうだけど、苦労して使い魔倒してきたと思ったら、ボスはもう倒されてるんだよ? 釈然としないじゃない」
「くっ、それは悪かったな」
少女は腹立たしげに言うものの、インキュベーターは獣の顔にシニカルな笑みを浮かべることで応じるだけだ。そして、先程手に入れたグリーフシードを少女へ差し出す。
「では、お詫びとして進呈しよう」
「もう、ならありがたく受け取っておきますよ」
暖簾に腕押しの様なインキュベーターの態度に、少女は溜息を吐きながら苦笑した。そして、彼女がソウルジェムにグリーフシードを近づけると、ソウルジェムから濁りの様なものが抜け出て、グリーフシードに吸い込まれていく。すると、ソウルジェムは眩いばかりに輝き、逆にグリーフシードは僅かに暗い気配を濃くさせた。その両者を、少女はしげしげと見比べる。
「いつも思うんだけど、何で貴方からもらうグリーフシードだと穢れがよく取れるの?」
「企業秘密、と言わせてもらおう」
「ケチ」
インキュベーターのはぐらかしに、少女は不満げな声を上げた。それから、少女は何処か躊躇うような表情を見せる。
「あのさ」
「む?」
「実は私、引っ越すことになったんだ。お父さんの転勤で」
神妙な態度で言う少女に、インキュベーターは感情をうかがわせない顔になる。
「そうか」
「そうかって、それだけ?」
「それだけとは?」
「だけとはって……もっと、ほら、寂しくなるなとか、何かないの?」
そこまで言うと、少女の表情はしまったと言わんばかりのものに変わる。
「ほう? つまり、私に何か言ってほしかったということか」
そして、インキュベーターは眉毛のない顔ながら表情を意地悪く歪めた。一方で、少女はその頬に赤みを差す。
「そ、そういうわけじゃなくてね」
「くっ、君が私との別れを惜しんでくれるとはな」
「もうっ、違うって言ってるでしょ!?」
少女の憤慨を受け流し、インキュベーターは表情を引き締める。
「決して、膝を屈するな」
「え?」
唐突なインキュベーターの言葉に、少女は虚を突かれた声を上げた。
「新しい土地では、その土地や近辺で活動している魔法少女もいるだろう。日常においても、新しい環境には戸惑いがつきものだ。だが、決してそれに挫けるな」
真摯な態度で言葉を続けるインキュベーターに、少女もまた真面目な顔で聞き入る。
「だが、どうしても進むべき道を見失ってしまうのなら、一度自分の原点を振り返ってみるといい」
「原点?」
「そうだ。もし今の自分の姿に絶望することになったのなら、今ではない過去にも、一
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