第十一話
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らすようなことしてるんだ。
遅かれ早かれ気付くであろう事とはいえ、手紙でのやり取りでその事実を明かすのは、色々問題があるだろうに。
「この学院を統括する者としては、何とも厄介事を招き入れたものだと思った。しかし、儂個人として言うのであれば、よくやったと褒めたいところじゃな」
「あら、トップがそんなこと言っていいのかしら」
「個人の言葉はいつだって上辺ばかりの言葉に塗りたくられるもの。だからこそ、こういう憚らず語れる時に語るものなのじゃ。お主も大人になれば、言いたいことも言えない世の中に生きるという意味が分かってくるだろう」
ポイズン。と口に出しそうになった私を誰が責められよう。
まぁ、いつも通り電波を受信しただけなんですけどね。
「この年になっても、他人の顔色を伺って生きていくことになるというのは堪えるものじゃて。そういう未来を選択したのは自分である以上、愚痴を言う権利はないのかもしれんが、それでもたまにはぶっちゃけたくなるのじゃよ」
「私は年がら年中ぶっちゃけてますけどね」
「羨ましいのう。お主が大人になった世代では、それぐらいが丁度いい世の中になってくれればいいのじゃが………」
「まぁ、そんなことはいいんですよ。で、本題に入りましょう」
ぱんぱんと仕切り直しの手拍子を鳴らす。
このままだと、こんな会話が無限に続きそうだったし。
突っ込み役がいないと、こういうことになるという典型的な例である。
「そうじゃな。と言うわけで、これを受け取りなさい」
そう言って手渡されたのは、一冊の本。
表紙は年代物を思わせる古さを醸し出しており、中身を拡げてみるも、それはどのページも白紙という落書き帳としか呼べない代物だった。
「それは始祖の祈祷書。表面上ではあるが、ゲルマニア皇帝に嫁ぐというポーズを取らないといけないアンリエッタ姫が、あくまで便宜上の婚姻の為の詔を読む巫女に、お主を抜擢したのじゃよ」
「へー。これが始祖の祈祷書、ね」
「………予想通りではあったが、本当にどうでもよさげじゃのう」
「これが国宝級の価値があるというには、無理があると思うわよ。確かこれって贋作が量産されているんでしょう?そんな数ある内のひとつが、偶然にも本物でしたって考えられるほど私は夢見がちじゃないんです。まぁ、ここまで胡散臭いと逆に本物っぽいですけどね」
なにせ、中身がオール白紙ときたもんだ。
中途半端に偉そうなことを書いているものと比較しても、ここまで突き抜けたものが相手では逆に本物にしか見えない。
そういう人間心理を突いてこれを作ったというのであれば、ソイツはかなりのやり手かタダの莫迦だ。
「とにかくじゃ。アンリエッタ姫はゲルマニア皇帝に嫁ぐ気なぞ毛頭ないじゃろうし、その為の
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