第十一話
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「ん、んう………」
肉体の気怠げな感覚と共に、ウェールズは目覚める。
ぼやけた思考を拭えないまま、周囲を確認する。
個室程度の広さの部屋に、生活用具一式が綺麗にレイアウトされている。
貴族の典型的な部屋にしては素朴に見えるが、決して粗雑な訳ではなく、質素と贅沢を綺麗に二分割したかのような平凡極まりない部屋といえるだろう。
この部屋の持ち主はとてもしっかりした人物なのだろう、と下らないことを考えながら徐々に状況を把握していく。
自分が眠っていたのは、天蓋付きのベッド。この部屋唯一の貴族らしさを醸し出すものでもある。
所々に女性が好む装飾がついているのを見る限り、この部屋の持ち主は女性と考えていいだろう。
同時に、ここがニューカッスル城でないことも把握した。
あの場に居たアルビオンの貴族の中に、女性はいなかった。女子供は全員予め退避させていたからである。
そしてこの部屋の構造も、一般的な貴族の部屋にしては狭い。
ニューカッスル城内のゲスト部屋でも、もう少し大きいぐらいだ。
そして、自分の状況。
着物は一張羅から寝間着に変わっている。拘束された様子もない。
確か最後の記憶では、隠密任務であの場に訪れたルイズと会話をしていた。
前後で記憶を飛ばすほど酔っていた記憶はない。
浚われたにしては扱いが丁寧で、レコン・キスタの手の者からすれば自分を生かす意味はないだろうし、その可能性は脇に置く。
あまりにも不明瞭な繋がりに思考が追いついていかない。
そんな彼の下に、現状打破の軋みが響く。
「あら、お目覚めねウェールズ」
突如開いたドアの先には、ルイズが眠たげに目を細め立っていた。
「ほら、どきなさい邪魔よ」
ルイズは小柄な肉体からは想像もつかない力で自分を抱きかかえ、乱暴に床に降ろす。
その遠慮のない扱いも相まって、混乱は加速する。
「み、ミス・ヴァリエール。何だか良く分からないんだが」
かろうじて自分の思いを口にする。
抽象的すぎるが、それだけ意味が分からないことばかりなのだ。
「んー?あー、アンタは今日から魔法学院で私の召使いとしてしばらく生きることになりました。以上」
そう言いながら、ベッドの上に俯せにダイブする。
ウェールズが見てきたルイズの印象とはまるで違う自堕落な雰囲気に、少々戸惑いを見せる。
「い、いや。それだけじゃなんだか分からない………というより、ここはもしかしてトリステイン魔法学院なのか?」
「いえーす。アンタを慕う貴族の兵士達の意思を尊重して、アンタをアルビオンから無事脱出させたの」
「そ―――そんな!そんなことをすればいらぬ被害が拡大するだけだ!」
「アンタの存在が戦争の起爆剤になるかどうかなんて、誰にも証明できないわよ。戦争は勝った
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