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レンズ越しのセイレーン
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Report3-2 アキレウス/ハイライト
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持って報告しといてやるから、無言で凹むな」

 アルヴィンはマルクスに断り、GHSを取り出しながら応接間の外へ出た。しっかりとそれを見届けてから、ユティはカメラを構えた。

 マルクスが足元で寝ていた白猫を抱き上げる。

「あの人から聞きました。昔、執事さんをしてらしたって」

 シャッターを切る。まずF値を最大にしてクリアに。

「そこまで話されましたか……はい。ユリウス様がお生まれになる前から、ユリウス様の生家で娘たち共々働かせていただきました」
「ユリウス、こうも言いました。俺の気持ちを分かってくれたのは爺やだけだった、って」
「そうですか…ユリウス様がそんなことを…」
「若い頃のあの人に理解者がいてくれて、よかった。ずっとひとりぼっち、じゃなかったんだって分かって、ワタシも嬉しいです」

 シャッターを切る。今度はF値を手動にして、あえてバックをボカした。

「……お嬢さん、あなたは一体」

 ユティはシャッターから指を外し、カメラを下ろした。
 そして、困惑するマルクスに対し、ただ、微笑んだ。



 こうしてユティとアルヴィンはマルクスの屋敷を後にした。

「レイア、涙声だったぞ。後でちゃんと詫びの電話入れとけよ」
「ごめんなさい」

 ドヴォール駅の駅舎に入る。大勢の利用客と、アナウンスの反響で、構内はひどく騒がしい。

「ねえ」
「何だ」
「家族、いる?」
「自称親戚ならたーくさんいるぜ。おたくは?」

 ユティは無言で首を振った。アルヴィンはそれ以上尋ねて来なかった。代わりにぽつっと「俺もだ」と答えた。

 トリグラフ行きの列車がホームに走り込む。列車に乗る直前、ユティは一度だけふり返った。

(猫ユリウスと一緒に、いつまでも元気で長生きしてね。ひいお祖父ちゃま)
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