暁 〜小説投稿サイト〜
或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第三十四話 千客万来・桜契社(上)
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
水軍の戦争指導も此方と同じようだったか」

「陸軍も同様ですか」
「努力が払われていると云う点も、だがね」

「〈帝国〉も大国としての悩みを抱えています。凱帝国にアスローン、現在は一時的に凪いでおりますが〈帝国〉は西の国境においても火種を抱えているのは事実です。あちらも騒がしくなれば多少は楽になるのですが」
 馬堂中佐が額を掻きながら言う。
「在外公館も動いているがそれを当てにする分けにもいかない。御国もこれから更に傷つくだろうな」
 保胤中将が悲しげに頷く。
「国力がちがいすぎるのです、義兄上。」
 義弟が慰める。
「直衛、お前の予想は如何なものだ?」
駒州公が自身の末子に目を向ける。
「義兄上の仰る通りです。碌でもない事になる事だけは確信しています。
正面きっての大会戦による短期決着は論外です、長期消耗戦に持ち込むしかありません。」
 新城も躊躇なく断定する。
「昨今の戦では戦費の増大に拍車がかかっています。
短期決戦が行えない以上はよほど上手くやらないと〈帝国〉軍に手を引かせる事に成功しても大量の財政赤字が残ります。
そして、〈帝国〉も〈皇国〉に負けたとは思わないでしょうから賠償や領土割譲で損失を埋める事も期待出来ないでしょう。
戦後の事を考えると恐ろしいくらいです。――まぁ、尤もこうした事に関しては義兄上の方がよく御存知でしょう。」

「嫌な話を持ち出す。私も子供の内に駒城の内情を見せすぎたな。」
 そう言いながら保胤中将が軽く頷いて賛同の意を示す。
「事実、弾薬の消費量は恐ろしく跳ね上がりましたね。
第十一大隊が苗川で戦闘した際には消耗を避ける為に白兵ぬきでしたから尚更でしょうが。
予想よりも消耗が早かったので、冷や冷やしました」
そう言って馬堂中佐は目を伏せた。

「君の父――豊守准将が伝えてくれたのだが弾薬消費量についての報告が上がってきた。
金穀の総額は未だ終わっていないようだが。」

「どうでした?」
 笹嶋も興味を示した。陸兵隊の事も考えれば水軍もけして無関係ではない。
「天狼――は二刻程度で大崩れしたからあまり参考にならないが、
その後の遅滞戦闘などの統計によるとおおよそ三刻で銃兵は三百発以上、砲兵は一門につき約二四〇発と出ている。」
「いいですね、計測出来る幕僚が居て」
 しみじみとある意味泣ける事を呟く砲兵中佐に新城も深く頷いた。
苦労人達を無視して保胤は台詞を続ける。
「今後、正面からの大会戦――それに類するものが発生した場合、一日で当砲には一門あたり千発、銃兵には一人あたり千二百発を用意せねばならない。
更には兵站の増強も必要だ。弾薬の増産備蓄に工廠の増設、――更には後備の動員。
戦費の工面に苦労するだろうな」
 苦い顔で〈皇国〉最高と評された軍政
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ