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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第58話 水の契約者
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為に、これは仕方が有りません。
 今日のトコロは、普段通りの蒼き吸血姫タバサの様相と言って間違いないでしょう。

 片や。
 淡い青色の広い襟を持つ半袖のセーラー服と、同じ色の短いスカート。銀のフレームのメガネが、彼女の印象をよりシャープな物にしているのは間違いない。
 但し、魔法使いの証で有る魔法使いの杖や、貴族の証で有るマントは着用せず。

 そして、何故か左手の甲に、それまでの彼女には存在しなかったナイフで刻んだかのような直線で表現される文字が浮かび上がっていた。
 そう。それは俺と交わした式神契約により刻まれた印。ルーン文字により刻まれた内容は、湖の乙女。彼女自身を指し示す名称がそこには刻まれて居ました。

 このルーンが刻まれた理由はよく判りませんが、契約を交わすと同時に俺の左目から再び血涙が溢れだした以上、俺に刻まれた生贄の印と同じような理由により、彼女にルーンが刻まれた可能性が高いと言う事なのかも知れません。

 湖の乙女も、俺の問い掛けに対して、黙って微かに首肯いて答えてくれる。

 二人の少女の答えを受けおもむろに、重厚な、と表現される扉を二度ノックする俺。

「開いているよ、入りな」

 そのノックが終わった瞬間に、室内より掛けられる言葉。かなり、ぞんざいな、市井の町娘に等しい言葉使いながらも、この大国ガリアの姫にして、北花壇騎士団の長たる存在。イザベラ姫の声により、一同に入室が許可される。

 ゆっくりと、重厚にして堅固な、と表現される実用性を重視した扉を開く俺。

 その重い扉を開いた瞬間、湖の乙女より、微妙な雰囲気が発生した。これは、少し酩酊……。いや、陶然としたと表現すべき雰囲気。そして、少し視線を彷徨わせた後に、まるで夢遊病者の如き覚束ない足取りで、一面の壁を完全に塞いで仕舞っていた本棚の前へと進んで行き、そして、その中から一冊の分厚い革製の表紙を備えた古書を手に取った。

 もっとも、この反応は、タバサの部屋に連れて帰った時にも彼女は同じような反応をしたので、あの部屋よりも更に古書の類の多いイザベラの執務室ならば、こう言う反応を示す事は想像に難くなかったのですが。
 それにしても……。

 湖の乙女に倣う訳では有りませんが、これから侵入する室内をゆっくりと見回して見る俺。
 そして、相変わらずのイザベラの執務室内の状況に、少し呆れてため息に等しい吐息をひとつ洩らした。

 そう。壁一面を埋める本は、相変わらず雑然とした印象で整理されている雰囲気はなく、更に床や来客用のテーブルの上にも平積みされた貴重な古書たち。
 そして、イザベラの執務机の上には現在、目を通している書類やサインや花押を記す際に必要な筆記用具が雑然と並べられ、その両サイドには、決済前の整然と積み上げら
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