第5章 契約
第58話 水の契約者
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には、タバサにも似た雰囲気は感じて居ます。しかし、彼女には、未だ成長の余地を残す曖昧な部分が有るのに対して、湖の乙女には、完成された……まるで、何者かに造られた存在で有るかのような完成されたイメージが存在する。
タバサが未だ咲き切らない花ならば、彼女は、うかつに触れると砕け散りそうなガラス細工。いや、時とともに儚く消えて仕舞う氷の芸術と言うトコロですか。
素早く左手の指を斬り裂き、そこから滴り落ちる生命を司る紅き液体にて、自らのくちびると、彼女の薄いくちびるを淡く彩る。
その俺の行いの一部始終を見つめていた湖の乙女が、そっと瞳を閉じる。
そして……。
そして、俺は彼女と、五度目の契約を交わしたのでした。
☆★☆★☆
最早、顔見知りと成ったイザベラ付きのメイドに軽く目礼だけを行ってから、通い慣れた廊下を奥に向かって進む俺達。
尚、そんな俺とタバサに関しては、メイドたちも案内を行う事もなく、既にフリーパス状態。
間違いなく、俺達に関しては信用されていると言う事なのでしょう。
八月、第一週、虚無の曜日。
敬虔なブリミル教の信者ならば、今日は完全に休養日と成るはずなのですが、ガリア北花壇騎士団の御仕事は年中無休と言う事なのでしょうね。
刹那、微かな違和感と共に、今、境界線を越えた。
この微かに漂う異界の雰囲気は、異界からの侵食を阻む聖域の証。このプチ・トロワは、何らかの霊的防御により保護されているのは間違いない。
普段通りの廊下を辿り、イザベラの執務室の前に辿り着く俺達三人。
振り返って自らの相棒を見つめる俺。彼女も、何時もと同じ透明な表情を浮かべ、紅いフレームのメガネ越しの視線で俺を見つめ返す。
言葉に因る答えなど必要とはしていない。これは肯定。ならば、
彼女の答えを確認した後、そのまま、反対側に立つもう一人の同行者に瞳を向ける俺。
その視線の先。具体的には、俺の左側に位置するその場所には、あの七月最後のエオーの夜に俺と契約を交わした湖の乙女の麗姿が存在して居た。
尚、本日のタバサの出で立ちはと言うと……。
白い長袖のブラウス、黒のミニスカート、それに白のタイツ。トリステイン魔法学院の女子学生に相応しい服装に身を包み、闇色のマントを、五芒星を象ったタイピンで止める。
その右手に携えているのは、彼女のトレード・マークとも言うべき、自らの身長よりも大きな魔法使いの杖。そして、彼女に良く似合う紅のフレームの伊達メガネを装備。
真夏の陽光の下を歩むには、その長袖や、白いタイツなどが少し異質な雰囲気も醸し出していますが、彼女の体質から、流石に肌の露出部分は出来るだけ少なくしなければならない
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