第5章 契約
第58話 水の契約者
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切歯扼腕《せっしやくわん》。護れなかった者たちの無念の思いを受けて、歯ぎしりをする結果と成る確率が高いと言う事です。
しかし……。
「但し、例えそれが天命で有ったとしても、それをあっさり受け入れなければならない謂れは俺にはない。神のやり方が気に入らなければ、否と唱え続ける事。それが基本」
神はサイコロを振るのか。良く有る問いに対する俺の答えがこれ。
神はサイコロを振り、その結果を簡単に人間に押し付けて来る。俺はそう思って居ますから。
しかし、そうならば、人はその暴君どもの前にひれ伏して、奴らの好き勝手な行いを受け入れ続けるしかないのか。
否。断じて違う。
人は、神の行いが間違っていると思えば、その間違いを訴え続ける、と言う方法で神の押し付けて来たサイコロの出目をひっくり返す事が可能。
歴史上、有名な英雄と呼ばれる連中の内の多くは、その諦めが非常に悪かった連中の事ですから。
英雄と呼ばれる連中は総じて諦めが悪く、そして、神や、それに類する連中より押し付けられる結果や経過に我慢が出来ずに、生涯を通して否と唱え続けた人間たちが為した結果を指して、後世の俺達は英雄と呼んでいるのですから。
「そうすれば……。人が、断じてそのサイコロの結果を受け入れなければ、神は自ら押し付けたサイコロの結果を自らがひっくり返す。自らが選んだ救世主がすべての人々の原罪を背負い十字架に掲げられると言う結果を受けて、熱情の神で有り、嫉妬の神でも有った御方が、愛の神へと生まれ変わったようにな」
俺は、真っ直ぐに、珍しく視線を逸らす事もなく、湖の乙女をその視界の中心に置いたままの状態で、そう告げた。
その言葉を聞いた湖の乙女の反応は……表情は変わらず。普段通り、感情を表す事のない透明な表情を俺に向けたまま。しかし、内面は違った。その俺の言葉を聞いた瞬間、何とも微妙な雰囲気を発生させたのだ。
何と表現すべきか……。妙に甘酸っぱいような、遠い昔の事を思い出したかのような。……そう、遙か昔に失って仕舞った懐かしき何かを思い出した時のような感覚。
彼女の心の琴線に響く部分が、先ほどの俺の言葉の中に有ったのでしょう。
そして更に、彼女の言葉が事実で有ったのならば、彼女と俺は某かの縁が有ったらしいので、もしかすると、前世の俺が語った言葉を、ここで再び口にした可能性は有りますか。
但し、俺の方には一切の記憶を有してはいない話なのですが……。
「俺は英雄などと呼ばれる連中とはかなり違う、ごく普通の一般的な思考の元に行動する人間。但し、今回は流石に問題が有る」
まして、今回の旱魃は俺やタバサが関わった結果に起きた出来事の可能性も存在します。
確かに、起きつつ有る事件に気付いて居
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