第5章 契約
第58話 水の契約者
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巻き込んで良いのかと言う疑問が、再び脳裏に浮かんだ。
しかし、
「そして、魃姫が顕われた事により、今年の凶作は、ほぼ確定したと考えても良いと思う」
しかし、ここで、気圧されて引く訳には行かない。そう考えて、言葉を続ける俺。
確かに、このハルケギニア世界は魔法が支配する世界。故に、地球世界の中世と同じ程度の治水・利水のレベルではないとは思いますが、二十日以上、一滴も雨が降らない状況で、農作物に影響が出ない状態に有るとは思えません。
魔法の恩恵を得られる貴族には今のトコロ問題はないのでしょうが、既に庶民の暮らしには影響が出て来ているはずですから。
「それで、出来る事ならば、水不足のような事態を防ぎたいと思っている」
彼女の視線に気圧されながら、ようやく、そこまで言葉を続けて来た俺。
そう。彼女が水を支配する存在ならば、旱魃を完全に防ぐ事は出来なくても、ある程度の被害に止める事が可能ではないかと思って、ここにやって来たのですが……。
しかし、この依頼には大きな問題も存在している。それは……。
「確かに、この世界の状況。人はブリミルを信仰するが、精霊は無視。
そして、本来、精霊の友で有るべき魔法使いは、精霊の生命を消費して魔法を発動しながら、精霊と言う存在に関しては無関心どころか、敵意さえ示す」
まして、聞くトコロに因ると、この世界の医療や水の系統魔法の行使に際して非常に重要な位置を占める魔法のアイテム、水の精霊の涙と言うのは、彼女たちを構成する物質。つまり、身体の一部、と言う事。
そして、当然そんな物が簡単に手に入るはずもなく、ラグドリアン湖の精霊は、つまり、一部の連中からは密猟の対象とさえされているらしい存在なのです。
この状況から考えるのならば、湖の乙女たちは人間を恨みこそすれ、積極的に助けてくれる存在だとは思えないのですが。
正直に言うと、彼女らに取って人間が滅びたとしても、現状ではまったく問題有りませんから。むしろ、居なくなってくれた方が、自分たちの生活が脅かされる事が無く成るはずだと思います。
尚、トリステイン王国とラグドリアン湖の精霊との間には、湖の精霊を護る代わりに、水の秘薬を一定量、毎年、トリステイン王国に納めると言う取り決めが有るらしいのですが……。ただ、現在のトリステイン王国は、水の秘薬を要求するのですが、残念ながら、密猟者から彼女たちを護るような処置は取っていない、と言う事です。
メガネ越しの、冬の属性を持つ視線で真っ直ぐに俺を見つめていた紫の髪の毛を持つ少女が、ゆっくりと首を二度横に振った。
これは否定。
そして、彼女ら水の精霊たち。いや、この世界の精霊が人間に抱いている感情が大体、想像が付く答えでも有りました。
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