第5章 契約
第58話 水の契約者
[2/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
な事を考えていたその刹那。
食事が終了した少女から巨大な気が発生する。但し、大きな気であるのは事実ですが、悪しき気では有りません。
そもそも、彼女は天帝の妹と伝えられる存在。悪しき気に凝り固まった陰に属する存在では有りませんから。
それは乾いた風。中国の伝承に語り継がれる、彼女……魃姫が暮らす事を許された地から吹き付ける乾いた西風。
そして、その一陣の風が吹き止んだ後、その場に存在していたのは……。
妙にゆったりとした青や緑を主とした衣装に身を包んだスレンダーな美女。いや、手弱女と表現すべき優美で、繊細な雰囲気の東洋風の美女がコルベール先生の目の前に存在していた。
そう。西洋風剣と魔法の世界のハルケギニアでは見た事のない形で、長き髪の毛を見事に結い上げ、金の釵子で纏める女性。尚、釵子と言うのはおひな様の髪の毛を飾るかんざしの事です。
更に身に纏うそれは天女の印。薄い向こう側が透けて見える天女の羽衣。つまり、領巾は、それ自体が引力の定めから解き放たれたが如くひらひらと宙を舞い、開け放したままと成っている研究室の扉からそよぎ来る風になびく。
「魃姫とは、伝承上に語られる天界に帰る事の出来なく成った不幸な天女の事。おそらく彼女は、異世界から何らかの理由で訪れた来訪者で、私と同じように元々住んで居た世界に帰る事の出来なく成った存在」
俺は、扉から一歩踏み出しながら、大きな驚きに彩られた顔でその東洋的な美女を見上げるコルベール先生に説明を行う。
尚、タバサに関しては……。普段通り、夜の属性に相応しい雰囲気を纏い、冬の属性の視線で、女童から天女へと変じた魃姫を見つめるのみ。
もっとも、タバサには魃姫の正体を教えて有りましたし、コルベール先生には教えては居なかったのですから、二人の対照的な反応は、当然と言えば、当然の反応なのですが。
そして、
「さぁ、天女さま。貴女の帰る道は判りますか?」
普段の少しいい加減な雰囲気とは違う、真面目な顔、及び雰囲気を纏った俺が、天帝の妹とされる神格を持つ女性に対してそう問い掛けた。
俺の日本語に因る問い掛けに、少し弱々しい雰囲気ながらも魃姫が小さく首肯く。
彼女の出自は大陸ですが、日本にも流れて来ている神様ですので日本語が理解出来る事は間違いでは有りません。まして、俺の言葉はハルケギニアのガリア公用語に同時通訳されているはずですから、ハルケギニアの魃姫に当たる存在だったとしても通じているはずです。
刹那、後方より風が吹き込んで来る。これは西からの風。
但し、この世界的に言うなら、海から吹き込んで来る風は湿り気を帯びた風のはずなのですが、その風は何故か非常に乾いた風で有った。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ