参ノ巻
守るべきもの
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あたしは真っ赤にのぼせた顔で逆ギレした。
「田中中衛門功郎」
鷹男の低い声が響いた。
「ここは退け。もうわかるだろう。わたしの薬がきれた以上、そなたに勝ち目はない。ここで退くのなら、家までは手出しせぬ」
田中は目を泳がせると、「クソッ」と吐き捨て、鷹男とあたしをぎらぎらとした瞳で睨み付けた。
この目は、見覚えがある。
柴田家の、発姫。鷹男に毒を盛ろうとしていた側室も、あたしをこんな目で見ていた…。
「若殿…あなたのお命を狙っているのは、私だけではないということを、ゆめゆめお忘れなきよう…。その様子では、すぐに寝首を掻かれますぞ…」
男は言うだけ言ってすっと去って行った。
「鷹男!」
鷹男はすぐに膝をついた。
「だ、大丈夫…じゃ、ない、よね?血で治るの?ほっぺからは恥ずかしいから、指の血で良ければ…」
「姫、唇に血がついておりますよ?わたしはそちらでもいいのですが…」
「それだけ喋る元気があれば大丈夫ね。ほら」
当然あたしは指を鷹男の目の前に突き出した。
「遠慮なくどーんといって」
「姫…」
鷹男が含み笑いをした。
「恥ずかしいんだから!はやく」
「では、遠慮なく」
鷹男はあたしの手を取ると、指の傷に唇を寄せた。
ちりと傷に熱が走る。
い、いたたた…。
「…姫は、刀を扱えるのですか?」
「ええ?なによ急に。あれが扱ってるように見えた?」
どう考えても押されっぱなしだった。
しかし鷹男は頷く。
「ええ」
「冗談でしょ?」
「いいえ」
「そしたら目も毒にやられてたわね、鷹男。…じゃなくて若君」
今更だけど訂正してみると、鷹男がくすりと笑ったのを指先で感じた。
「私の妻になる気になられましたか?」
「違うわよ!あたしも一応前田の姫だし敬った方が良いかなって一瞬思っただけ。ほんとーに一瞬。でも鷹男は相変わらず鷹男だったしいいわあんたは鷹男で」
「はい」
鷹男はあたしの指からゆっくりと唇を離した。あたしはすぐさま自分の指を取り返して、もう片方の手で覆った。
「そのようにして嫌がられると傷ついてしまいますね」
「嫌がってるわけじ
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