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戦国御伽草子
参ノ巻
守るべきもの

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 髪は女の命だっつーの!どいつも〜こいつも!



 あたしの髪ばっか狙いやがって!ハゲにするつもり!?



 あたしは激しい怒りに唇を噛んだ。勢いがよすぎたのか、ぶつりと唇が切れて、血の味がじわりと滲む…。



 あたしははっとした。



 血!?



 『血』、なのね、鷹男!?



 あたしは人差し指の腹に歯をかけて、大きく噛みちぎった。



 い、いったぁ〜!



 あたしは痛みを堪えて、鷹男の口にその指を押し込んだ。



「おい!やめろ!」



 慌てた男が止めようとするって事は、アタリ、だ。



「なぜおまえそのことを…まさか!くノ一か!?」



「だったらどうだっていうのよ」



 あたしはふんと鼻で笑ってやった。別にこの男にあたしがどう思われようがどうでも良い。



「それなら手加減はいらんな」



「訂正。ただの姫です」



「嘘をつけぇぇぇぇえええ!」



 男は笑顔を消すと刀を振りかざして飛びかかってきた。



 きゃー!というか嘘をつけってどういう意味よー!あたしは正真正銘の姫なんだからぁ!



 もう一度、男の刀を受け止める。刃こぼれしそうなほど刀は耳障りな音を立てる。折れないで、お願い…!



 男の刀は重く、あたしはじりじりと押される。一歩、二歩とさがる度に額を汗が滴り落ちていく。



 あ、ま、ずい…押し負ける!



 あたしの背が、固い物にあたった。壁際まで、追い詰められたのだ。そう思ったその時、横から優しい手が、あたしの手の上に被さる。



「鷹男!」



 壁だと思ったのは鷹男だった。鷹男は無言であたしに微笑むと、刀をぐ、と押し返した。



 今の今まで自由がきかなかった筈なのに、今度押されているのは男の方だった。それでも鷹男は、片手しか使っていない。まだ、完全には動かないのか…。



 鷹男はあたしを見下ろし、今度は困ったように笑った。意味がわからずあたしが瞬くと、鷹男がふと屈んだ。左頬に感じる熱…。



 って、あええ!?いや、わかる、わかるのよ!多分解毒には血が必要で、それには今圧倒的に量が足りないんだって事も。でも、いきなり頬の刀傷を、舐められる身にもなってみてよ…!別の意味で、死んじゃうわ!



 いやでも緊急事態、緊急事態…。



「ごるあ!俺を忘れていちゃつくなぁ!」




「うるさい!あんたが妙な薬盛るからいけないんじゃないのよ!」



 
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