参ノ巻
守るべきもの
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あわかんない。でもまさか死んでるなんて事ないよね?ないはず。
とりあえず、この男を鷹男の傍から遠ざけなきゃいけない。
「おまえ、不愉快だわ」
頭の中だけ目まぐるしく動かしながら、あたしは男に声をかけた。
「さっさと消えて。じゃないと、お父様に言いつけてやるから」
鷹男にしなだれかかるふりをして、あたしは鷹男の腰を探った。手が固い物に当たる。それをしっかりと握りしめて、鷹男とあたしの体の間で隠す。
男が去るならよし。そうじゃなければ…。
あたしはびくりと震えた。鷹男の脇差しを掴んだあたしの手、その手首を、大きな手が覆っていた。
鷹男!
起きたのかと思って顔を見たけれど、その瞳は硬くつむられたまま。
その指が、あたしの拳の上を動く。何度も、何度も。
なに、鷹男。なに!?
あたしに、何を伝えようとしているの?
あたしは混乱して、余程鷹男に声をかけたかったけれど、田中がゆらりと立ち上がったので、そうも言ってられなくなった。
「どこの姫かは知らぬが…どうせ、生かして帰すわけにもいくまいよ」
物騒なことを呟きながら、心なしか人相まで凶悪になった田中は、にやりと笑うと、腰の刀を素早く抜いた。
本当、あたしって、ついてない!毎回鍛える時間もなくこうも刀持った男と向き合わなきゃならないなんて。
「…芝居は終わり?」
あたしも鷹男の脇差しを抜いて鞘を落とした。
「おいおい、大刀が姫に扱えるのか?」
「そんなこと言ってあとで吠え面書くんじゃないわよ」
いやまぁ正直扱える気はしませんけどね。
「でやあああ!」
男は余裕綽々と言った顔で、襲いかかってきた。
後ろに動けない鷹男がいるあたしは避けることも出来ず、刀同士は高い悲鳴を上げて鍔迫り合いになった。
あ、ま、まずいまずいまずい…。鍔迫り合いなんて、力がないほうが負けるに決まってる。現にあたしのほうは支えきれずもうぶるぶると刀身が震えている。
男はにやりと笑うと、刀ごと力任せにあたしを弾き飛ばした。
あたしはよろけて片膝をついた。そこに、間髪入れずぱっと目の横を白刃が過ぎた。
一瞬の間を置いて、ぱらりと髪が落ちたのを知る。
こ、こ、こ、こんのやろ〜〜〜!
どうやら髪をひと束、持って行かれたらしい。
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