第二幕その一
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ンに言葉を返した。
「彼のことかな」
「そうよ。そろそろよね」
「ああ、昨日出た」
そうカルメンに答える。
「また手柄を立てさせないといかんな。あの男は優秀だからな」
「随分高く買ってるのね、あの伍長さんのこと」
「だから伍長にしたんだ」
スニーガはそうホセについて語るのであった。
「坊さんになる筈が遊びで身を持ち崩して騎兵隊に入ったというからまたゴロツキかと思ったがどうして」
「いい伍長さんなのね」
「あいつはきっと立派な軍人になる」
こうまで評する。
「だからだ。あの程度の間違いは何でもないようにしてやるさ」
「嬉しいわ。じゃああたしも機嫌をなおして」
にこりと笑う。そうしてテーブルから降りて椅子に座る。そうして赤ワインを飲もうとすると。
外から派手などよめきが聞こえる。店のすぐ側だった。
「ここで飲もう!」
「そうだ!」
「何かしら」
カルメンはその騒ぎ声を聞いてふと外に目をやる。
「誰か来たの?」
「ああ、エスカミーリョね」
仲間の一人浅黒い肌に黒髪の女メルセデスが言うのだった。
「そういえば今日はセビーリアにいたわね」
「エスカミーリョ?」
「今話題の闘牛士よ」
今度答えたのは燃えるような赤い髪の女であった。フラスキータである。
「グラナダのね」
「闘牛士か」
「それはいい」
大男のダンカイロと小男のレメンダートも言う。この四人もカルメンの仲間でジプシーだ。なお密輸商人でもある。カルメンもまたそうである。
「この店に是非来てもらおう」
「賑やかにな」
そう言って一旦店の外に出て彼等を招き入れる。するとドヤドヤと男達が入って来る。その中央には背の高い立派な男がいた。
目は吊り上がり君だがそこには強い光がある。黒い髪を奇麗に後ろに撫でつけその引き締まった顔は髭を奇麗に剃っていて若々しいものを見せている。
逞しい身体を白いブラウスと黒いズボンで包み赤いベルトと上着はスペインのものである。彼がエスカミーリョ、その噂の闘牛士である。
「ようこそセニョール」
「どうぞこちらに」
将校達が笑顔で彼を迎える。エスカミーリョも笑顔でそれに応える。
「やあやあこれは」
「さあ一杯」
「ワインを」
「宜しいのですね」
「どうぞ」
将校達はまた彼に対して言う。赤ワインを満たした杯を彼に手渡すのであった。
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