第三話〜過去〜
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背中は小さくみえる。
「そして帰ってきたときには…姉様が死んでいたわ」
焔の声がやや低くなる。
「ちょうど桃蓮が長沙へ赴任する直前でね。姉様は事前に視察をしてきたいって息子をつれてここに来たらしいの。…そこをどこから現れたかも知れぬ賊に襲われた」
焔の拳から血が滴り落ちるのが確認出来た。
「姉様の死体を見ることはできなかったけど、致命傷の他にもいくつもの刺し傷があった。息子に至っては死体すらも見つからなかった」
ズキッ
また江は頭に痛みを覚える。
火の海と化した村。
そこらに転がる無数の骸。
そして遠くから聞こえる女性の悲鳴。
それらの場面が断片的に江の頭の中をよぎる。
こんな光景知らない。
知りたくない。
思い出したくない。
「生存者がいなくて、どの賊の集団かも分からず仕舞い。…そして今から5年前、とある賊を討伐して、奴らの顔を見て驚いたわ」
「…5年前って…まさか」
喉が渇き、やっとの思いで絞り出した声。しかしその言葉を言い終わる前に焔は次の言葉をつづけた。
「姉様の死体の話を聞いて、ずっと疑問に思ってたの。明らかに恨みを持った人間の仕業、でも一体誰が、ってね」
そこまで言うと焔は言葉を切る。
そして自嘲じみた深い溜息を吐くと、口を開いた。
「なんてことはない、昔呉で私が討ち漏らした残党どもだったのよ。…恐らくは姉様の存在を知って復讐したのも奴らでしょうね」
「っ!?」
江にとって驚くべき言葉。
つまり江が属していた賊は十中八九焔の姉を殺した者たち。
「…今日、人を斬ることはなかったみたいね」
「はい…」
「確かに人を殺さないことに越したことはない」
でもね
焔は強い後悔を宿した目で江のほうを振りかえる。
「最高が最善であるとは限らない。最善を取るために、時には最低な手段を使うことも必要なの。…たとえそれが皆殺しだったとしても」
「分かり、ました…」
「あなたは近い将来、『孫呉の大黒柱』となる時が来るわ。…だからあなたの力でみんなを護ってあげなさい」
ドクッ
心臓が跳ねるように強く鼓動する。
と同時に頭の中の何かをせき止めるものが決壊した。
頭の中を埋め尽くす膨大な情報。
激しい吐き気と頭痛で江はその場に膝をつく。
「江、大丈夫!?」
そもそもおかし
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