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万華鏡
第二十一話 夏休みのはじまりその七
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「やっぱり結構暑いわ」
「夏は特になのね」
 彩夏は眉を曇らせて問うた。
「暑いのね」
「瀬戸内自体がね」
「瀬戸内ねえ。ちょっとね」
「彩夏ちゃん暑いの嫌い?」
「苦手だから」
 それでだというのだ。
「だって東北生まれだから、私」
「東北だからなのね」
「秋田って夏涼しいから」
 東北だからこれは当然のことだ、雪国の冬は厳しくそれと反対に夏は涼しいのだ。
「神戸は前に海、後ろは山で風もあるじゃない」
「ええ、確かに」
「それで夏でも比較的涼しいから」
 少なくとも隣の大阪よりはかなり過ごしやすい。その代わり冬は恐ろしいまでに寒いが彩夏はそちらは気にならない。
 だが江田島の夏はというのだ。
「暑いのね」
「そう、暑いわよ」
「神戸と比べてなのね」
「ずっとね。ただね」
「ただって?」
「島だから周りは海よ」
「海だからなのね」
「何かあれば泳げるし」
 それにだった。
「周りが海だとかなり違うから」
「お水だからね」
「大阪よりはずっと凄しやすいからね」
「それは有り難いわね。じゃあ」
「彩夏ちゃん泳ぐのは好きよね」
「ええ、涼しくなるから」
 とにかくこれに尽きた、彩夏はその胸の大きさも出身地と重なりそれでだったのである。
「好きよ」
「じゃあ丁度いいわね、それじゃあ」
「水着持って行かないとね」
 彩夏は何時の間にか目を輝かせていた、そして。
「機会があればね」
「マツダスタジアムね」
 琴乃も目を輝かせて言う。
「行くわよね」
「あそこは絶対に行かないとね」
「野球観ないとね」
「阪神が勝つのを観ないと」
 それが前提だった、彩夏は力説する。
「広島でもね」
「赤ヘル阪神に妙に強い時ない?」
 景子は怪訝する顔で言った。
「時々だけれど」
「それで借金凄く増えるのよね」
 琴乃は憮然とした顔になっていた、阪神と借金の関係は忌々しいことに密接な関係にある。
「阪神の場合はね」
「今だってそうだしね」
「油断するとね」
 ほんの少し慢心するとそこからだ、阪神は負けていくのだ。
「そうなるから」
「そうそう、注意しないと」
「合宿の時まで大丈夫かしら」
 琴乃の言葉は切実なものになっている。
「せめてAクラスね」
「幸い巨人は今年あの様だし」
「巨人には勝ち越してるし」
「だったらこのままね」
「勝ってくれるかしら」
 そうした話をしてだった、そのうえで。
 五人はストレッチからランニングに入った、夏なので水分の補給も忘れない。そうしてから音楽の練習もした。
 充実した夏休みも過ごそうとしていた、その中で。
 琴乃は学校から帰ると母にこんなことを言われた。
「ねえ、夏休みだけれど」
「何かあるの?」
「夏休み塾とか
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