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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第八話「決闘」
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型のリンスレットを戦闘不能にするつもりなのだろう。


 弦月飛脚で宙を蹴りながらエリスの足元目掛けて剣を投擲する。風を貫きながら豪速で飛来する剣をエリスは寸前のところで横に飛んで避わした。


 ――ゴォオオオオンッ!!


 剣は轟音を轟かして劇場の壁に突き刺さった。あまりの衝撃で放射状にヒビが入り、パラパラと破片が零れる。


 その威力にエリスの顔が引き攣った。


「なんという馬鹿げた威力だ……っ! やはり最大の障害はあの男か……」


 エリスは魔風精霊を手元に呼び寄せた。壁に突き刺さった剣を引き抜いた俺は再び宙を蹴ってエリスの正面に着地。彼女との距離は僅か二十メートルだった。


「凶ツ風よ、怨敵の心臓を貫く魔槍となりて我が手に宿れ!」


 展開式を唱えた途端に風が吹き荒れ、エリスの手に長大な槍が現れた。


 柄には紋様が精緻に刻まれ、紅い月の光を浴びた穂先は風を纏いかすかな風鳴り音を立てている。


 エリスは長槍をクルリと片手で回し穂先を俺に向けた。


「これが私の精霊魔装――〈風翼の槍〉だ」


「ふむ、精霊魔装を出したということは、ここからが本番と見ていいのかな?」


「ああ、正直侮っていた――いや、慢心していた。所詮はレイブン教室、とるに足らない相手だと。しかし、それは私の間違いだった。お前たちは強い。特にリシャルト・ファルファー、お前の戦闘能力は異常だ。この私すら越える力を持ち、精霊魔術にいたっては属性すら分からない」


 エリスは腰を落とし槍を中段で構える。


「だが、もう慢心はしない。お前が――お前たちがいくら強くとも、勝つのは我らだ!」


 凜とした顔で高らかに叫ぶ。その瞳には絶対に勝利するという強い意思が宿り、鮮烈な印象を受けた。


「……なるほど、ならこちらも相応の姿勢を見せねば失礼に当たるな」


 彼女の実力は確かに俺を下回るだろう。だが、この目は知っている。この目をした者を俺は知っている。


 諸国を旅していた時に出会った数々の強敵が皆、このような強い意思を宿した目をしていた。


 俺の心が歓喜で震える。新たな強者と出会えたことに感謝の念が耐えない。


 俺は剣を地面に突き刺し、踵を揃えて胸に手を当てた。


「エリス・ファーレンガルト」


「な、なんだ?」


 急に雰囲気が変わり困惑する。


「まずは詫びよう。すまなかった。君と同じく俺も慢心していた。所詮は学院生、敵ですらない相手だと心のどこかで思っていた。


 撤回する。君は敵、俺の強敵だ。君のような強者に合間みれたことを嬉しく思う」


 そう言って頭を下げた俺は再び地面
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