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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第八話「決闘」
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けると、目の前には異世界の風景が広がっていた。


 ねじくれた木々が茂る深い闇の森の中、空には紅い満月が煌々と輝いている。


 元素精霊界。精霊たちの住まう世界だ。


「ここなら誰の邪魔も入らないわ。それに負傷しても深刻な怪我にはならないから学院生同士の決闘でよく使われるのよ」


「確かにここなら決闘の場としては最適だな。多少のリスクは伴うが」


 肉体的損傷はすべて精神的ダメージに還元されるが、逆を言えば場合によっては意識障害に陥り、二度と意識を取り戻さないことも考えられる。


「炎よ、照らせ」


 クレアが精霊魔術で小さな火球を灯し、森の中にある細い道を照らした。


「行くわよ、リシャルト」


 クレアが先導し、暗い森の中を歩き出す。


「勝算は?」


「それはアンタの実力次第よ。……正直、厳しいかも。あの二人はともかく、エリスは強いわ。曲がりなりにも騎士団長だもの」


「ほう」


 クレア程の実力者がそうまで言うか。軽く返事を返したが、内心では驚いきだった。


「それにスカーレットも今朝の〈封印精霊〉との戦いで力が回復していない。リンスレットの実力は――癪だけどあたしと同等よ。それだけは認めてるけどね。でもチームワークは最悪なのよね」


「ふむ……意外と冷静な分析だな。君はもっと直情型かと思っていた」


「アンタあたしをどんな目で見ていたのよ」


「自分の心に素直ですぐ鞭を振りまわ――失礼」


 鞭を取り出したクレアを見て口を噤む。


 しばらく歩くと森のひらいた場所に巨大な劇場の遺跡があった。神代の時代、元素精霊界と人間界がまだ一つだった頃の名残。


 崩れかけた石の門が見えた。どうやらここが決闘の舞台のようだ。


「とりあえず、剣精霊使いのアンタが前衛ね。あたしとリンスレットが後衛で援護するわ」


「ふむ、まあ期待に添えるか分からんが善処しよう」


「頼むわよ、アンタが切り(ジョーカー)なんだからね」


 クレアは満足そうに頷いた。


「ところでアンタ、契約したあの剣精霊、ちゃんと使いこなせるんでしょうね」


「ん? ああ、まあ大丈夫だろう」


「本当に平気なの?」


「精霊魔装には成功した。あとは使い手である俺次第だ。なに、無様な戦いは見せないさ」


 と、そこへ暗い木立の向こうから、リンスレットが顔を出した。その傍らにはメイドのキャロルがついている。


「遅いわよ、リンスレット」


「あら、レディの身支度には時間がかかるものですわ」


 プラチナブロンドをかきあげて、なぜか誇らしげに胸を張っ
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