第八話「決闘」
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、姿を消した。
精霊姫の突然の裏切りを知った火の精霊王は怒り狂い、エルステイン公爵家をはじめとしたオルデシア帝国の領地を悉く焼き払った。
帝国に莫大な被害をもたらしたにもかかわらず、精霊王の怒りは納まらない。それから約一年、帝国内ではいかなる方法を使っても火を一切灯すことができなくなった。
人 々はこの事件の原因、元凶である精霊姫を激しく呪い、憎悪を込めてこう呼んだ。
災禍の精霊姫、と。
「そうか、君は彼女の――」
「そう、妹よ。災禍の精霊姫、ルビア・エリステインの」
目を伏せたクレアは胸中の思いを語る。
「あたしは姉様に会いたい。会って本当のことを知りたいの」
そのために強くならなければならない。最強の精霊を手にしなければならない。
《精霊剣舞際》の優勝者に与えられる権利――望む〈願い〉を叶えるために。
「それに――」
それまでの悲壮な表情に変化が訪れた。頬がわずかに浮気し夢見る乙女のような顔で呟く。
「あたし、フローレン・アズベルトのようになりたいの」
「……なに?」
クレアは恥ずかしそうに俯いた。
「三年前、あたしは会場で彼女の剣舞を見ていたの。精霊魔術と体術だけで戦い、一度も契約精霊の姿を見せなかった。彼女の情報は一切分からず契約精霊も分からない、すべてが謎に包まれた『謎の精霊使い』。あたしも、あんなふうに気高くて、強い精霊使いになりたいと思った」
あたしの憧れなの、と言葉を続ける彼女を俺は複雑な心境で見つめた。
三年前、突如現れた謎の精霊使い。その剣舞は華麗にして強烈。
十二騎将候補の精霊使いさえ圧倒し、決勝戦では惜しくも敗れたとされている。
それが世間の解釈。だが、実際は――、
「見えたわ、あそこよ」
と、クレアが唐突に足を止める。彼女が指差した先には巨大な石の円環があった。地面がぼんやりと青白い光を放っている。
「ほう、〈門〉というのは〈精霊界の門〉だったか」
「そうよ。この世界と元素精霊界を繋ぐ門。これがこんな辺鄙な場所に学院を作った理由よ」
「なるほどな。それであの〈門〉はどこに座標指定されているんだ?」
「低位精霊しかいない安全なエリアに繋がっているわ。じゃなきゃ、学院が放っておくはずないでしょ?」
「確かに」
精霊語で開門のキーワードを唱えると、淡く発光していた地面はさらに強く輝いた。
「ほら、アンタも来なさい」
クレアに手を引かれ、光陣の上に乗った途端、視界が暗転した。
いつの間にか閉じていた目を開
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