Episode 1 転生乙女は妖精猫を三度断罪す
骨を愛でるいくつかの方法
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たちにとってどう見えるかはしれないが、はっきり言ってこの国に住む魔族なら吐き気を催す行動である。
リージェン三兄弟たちも、それを話として聞いただけならば眉間に皺をよせて吐き気を覚えたことだろう。
だが……これはマズイ。
そこにいたケットシーたち全員がそう感じ取っていた。
ほしい! 喰いたい!
魔法の香りに全身を包まれ抵抗できない。
強烈な衝動に、頭が、体がおかしくなりそうだ。
「ギ、ギニャアァァァァ、く、苦しいニャ! それ以上にアレが欲しくてたまらないニャ!!」
「一口……一口でいいからそれがほしいニャ!!」
強烈な食欲と、体を縛る呪いにはさまれ、かろうじて動く顔の筋肉が崩れんばかりに苦悶を浮かべる。
口から滝のようにヨダレが溢れ、胃の腑が後ろから誰かに掴まれたかのようにギュウギュウと締め付けられた。
わけのわからない衝動にかられ、腹の奥からねじ切るような痛みと、脳が蕩けそうな快楽が地獄の歌をかき鳴らす。
なんと言う魔女の業!
ただの料理かと思いきや、なんの事は無い。
はっきり言ってこれは拷問である。
つまり……これは食物を雑多に食い荒らしたことに対する罰であった。
「ん? これが欲しいのか? さっき、美味しい蟹をたらふく食べたというのに……なんて卑しい猫だ、お前らは」
そう告げると、キシリアは邪神もかくやと思うほど底意地の悪い笑顔を浮かべ、土鍋の中にレンゲを差込み、一匙すくって自らの口に放り込む。
「んーーーーーー! んまい!! やっぱり、蟹殻の出汁で作った雑炊は最高だな!!」
ご飯と絡まった半熟卵の甘くて芳醇な味の向こうから、蟹の殻から出た濃厚な出汁がこの上も無い幸せとなって全身に押し寄せる。
さらに昆布の出汁と醤油と日本酒が横からそっとそのうまみを引き立て、蟹の臭みはネギが完全に覆い隠し、かわりに陶酔するようなひと時を与えてくれるのだ。
「お、お願いだニャ! ソレを……ソレを一口だけでもいいから味あわせてほしいニャ!!」
だが、それを横で見せ付けられるほうはたまったものじゃない。
すでにポメとテルアはヨダレで窒息して白目を剥き、息も絶え絶えといった有様である。
「まぁ、自分も今では魔族だが、慈悲が無いというわけではない」
「……え? いいのかニャ!?」
意外な申し出に、マルは歓喜で体が震えるのを抑えることが出来なかった。
「ニャアァァァァアニキだけはダメニャ!」
「僕らも欲しいにゃ! マル兄、分け前をよこすニャ!!」
「……ちっ!」
都合よく意識を取り戻した弟たちの言い分に、マルの口から舌打ちが聞こえる。
「ほら、仲良く三匹でわけろよ」
そう告げると、キシリアは白い深皿に蟹雑炊を掬い取り、熱々のソレを三匹の前
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