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おいでませ魍魎盒飯店
Episode 1 転生乙女は妖精猫を三度断罪す
骨を愛でるいくつかの方法
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森髭と一緒に煮込む」
 理力式のオーブンから蟹殻を取り出すと、キシリアはその半分を鍋の中に入れてネギにそっくりな薬草と一緒に煮込みだした。
 ちなみに"森髭(しんし)"とは落葉樹の森に生える浅葱にそっくりな山菜であり、樹木の根元から長さ1mほどにわたって、まるで木の根っこから髭が生えたように横に向かって細い葉を伸ばす球根植物だ。
 その仲間の竜角森髭は荒地に生える森髭の大型種で、見た目も香りも味もそのまんま長ネギである。
 残念なことに舌を刺す辛味とキツい匂いから敬遠されており、それが優秀な調味料であることを知る者はいない。

「さて、お次はようやくお米の出番だ」
 やがて蟹殻の濃厚な香りに竜角森髭のクセの強いとがった香りがまろやかに解けて交じり合う頃、キシリアは水で洗った穀物のザルを外の水場から持ってきた。
 その見慣れない白い穀物の粒を見て、ケットシーたちは僅かに首をかしげる。

 ――彼女が米と呼んでいたモノだが、見間違い出なければ、記憶が正しければ、金雨草と呼ばれる雑草の実である。
 実ったときの姿が金色の雨が滴るようであるためにこのような名前がついているのだが、少なくとも食用に使われる草ではなかったはずだ。
 南の湿地にたくさん生えていることは知っているが、硬いし臭いし味もろくなものではないので、大概の魔族は見向きもしない。
 聞くところによれば、人間たちもただの雑草として扱っていると聞く。
 毛づくろいで腹の中に溜まった毛を取り出すために繊維の多い葉を食べることはあるものの、その実を食べようなど誰が考えようか?

 ただ、下見のために食べた弁当の中に入っていた色とりどりのライスと呼ばれた料理は、ねっとりと柔らかく、甘みがあって、なにより今まで食べたことも無いほど美味であった。
 いったいどんな理力を使えばこんな食べ物が出来るのだろうかと三匹で首をひねったものだが、どうやらその奇跡が目の前で行われるらしい。

 興味深々でケットシーたちが見守る中、キシリアは冷ました蟹殻のスープを分厚い密封できるタイプの陶器の器にすれ、さらに塩と酒らしき透明な液体、そして微かに吟醸香のする黒い液体を注ぎ、それを洗った金雨草の実の上から注ぐ。
 そして黒に近い緑の板を上から放り込むと、小声でなにやらブツブツと詠唱を唱えてかなり繊細な理力を行使したようだ。
 やがて密封タイプの陶器の器(キシリアの曰く"土鍋"というらしい)に空いた穴から微かな湯気がのぼりはじめた。
 おそらくこの土鍋というものを加熱したのだろう。
 ある程度湯気が立ち始めると、キシリアはその理力の出力をさらに強めた。
 さらにキシリアは地下から真っ白な球体をいくつか運び出すと、それをテーブルの角にぶつけて割ってから中身を別の器に流しいれる。

「……
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