Episode 1 転生乙女は妖精猫を三度断罪す
骨を愛でるいくつかの方法
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膨らませて反論するが、ケットシーたちはさらに別のショックを受けただけのようだった。
「ニャ!? そんなガキンチョにつかまったのか……」
「ショックだニャア……」
「魔族に歳は関係ないだろ!!」
一部の魔族は子供の姿をもっていない。
特に妖精の半分ほどは最初から大人の姿で生まれるものでありキシリアの属するシルキーもまさにそんなタイプの妖精であり、その手のタイプの魔族は木の又から生まれるような生まれ方をするために、親ですら存在しない者がほとんどだ。
しかも最初から本能レベルで自分の知っているべきことを理解しているため、教育ですら必要としていない。
なんとも便利な、まるで家事用のアンドロイドのような妖精なのである。
つまりこの世界に生み出された妖精は、最初から言葉をしゃべることが可能であり、成人した人間とかわらないだけの知識を有している。
一説には、誰かの記憶の一部を受け継いで生まれてくるためにこのような現象が起きるのだというが、その中でも"前世の記憶"を全て受け継いで生まれてきたキシリアはぶっちぎりの例外だ。
「……っと、こんな事をしている場合じゃなかった」
ふと我に返ったようにキシリアがきびすを返す。
ケットシーと言葉のやり取りをしているあいだに、どうやら蟹殻の洗浄が終わったらしい。
「ほんと、理力って便利だよな」
水の中から取り出した蟹殻を取り出してひとしきり鼻に近づけると、その匂いを確認して満足げに小さく頷く。
「さてと、次はこれをオーブンで軽くあぶってと」
そう呟きながら、キシリアは洗い終わった蟹殻の水気を切り、それを今度は陶器で出来た四角い箱の中へいれて扉を閉めた。
そして先ほど詠唱を使って笑われたのが気に障ったのか、こんどは無詠唱で箱の中を加熱すると、椅子に座ってその仕上がりを待つ。
そして待つこと10分あまり。
「な、なんかいいニオイがしだしたニャ」
ケットシーの末っ子、テリアがクンクンと鼻を鳴らしてそんな言葉をボツリと呟いた。
「どれどれ……ほ、ほんとだニャ」
ケットシーの長男のマルもまた、同じようにクンクンとニオイを嗅いで弟の意見に同意する。
やがて部屋の中になんとも香ばしい香りがはっきりと立ち込めはじめた。
それは生の蟹の持つ生臭さを帯びた香りではなく、むしろ干した冬茹(傘が広がる前に収穫したシイタケ)やカツオブシなどの乾物に近い、ドッシリとしたなんとも食欲をそそる匂い。
「なんか……ヨダレが出てきたニャ」
口から溢れる透明な雫が顎を伝い、なんともむず痒い。
だが、彼等はそのヨダレを拭うことも許されず、ただまんじりともせずに床に転がっていることしか出来なかった。
「さて、焼いた蟹の殻を今度はネギ……じゃなくて竜角
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