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おいでませ魍魎盒飯店
Episode 1 転生乙女は妖精猫を三度断罪す
骨を愛でるいくつかの方法
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「屈辱ニャ……怪盗たる我らリージェン三兄弟がこのような辱めを受けるなど……いっそ死んだほうがまだマシだニャ……」
 二足歩行をする三毛猫が、ガックリとうなだれたまま自分の首に巻かれたベルトをいじりつつそんな愚痴をこぼす。

「しゃーニャイではニャーか。 ぶっ殺されるよりはマシニャ。 それに、真っ先に蹴り喰らってのびたマル兄に言われたく無いニャ」
「テリアの言うとおりだニャ。 それに、贖罪が済んだらまた汚名挽回のチャンスはあるはずニャ」
 ふて腐れたように反論するのは、同じく首輪をつけたケットシー二匹だった。
 予想はつくだろうが、彼等が首に巻いているのは隷属の首輪。
 所有者の命令が下れば、自分の意志と関係なく体が動く呪われたアーティファクトである。

 むろん一般的に出回るものではなく、役所にある専門の窓口での手続きが必要だ。
 そして昼過ぎ捉えられたこの三匹の怪盗は、そろってキシリアに御仕置きを受けた後、通報によってやってきた警備兵と司法官の判断により本日めでたく奴隷に身分が降格。
 しばらく飼い猫兼助手として働くことを余儀なくされたのである。

 そしてめでたく下僕となったケットシーたちを引き連れてキシリアがやってきたのは、彼女の城であるキッチンであった。
 
「うぅぅ……石鹸臭いニャァ……」
「我慢するニャ。 これも飼い猫となった者の宿命ニャ」
 三匹を捕獲してからキシリアが真っ先に行ったことは、この三匹の念入りな洗浄である。
 風呂に漬ける事2時間、シャンプー4回の上にトリートメント30分。
 むろん、ブラッシングも念入りに行われている。
 いまや三匹とも全身がフカフカでフワフワの状態だ。

 ご存知の通り、大概の猫は入浴が大嫌いである。
 例外も多いのだが、少なくともこの三匹は入浴が大嫌いであった。
 当然ながら全力で抵抗したのだが、屋敷を支配する妖精であるシルキーに家の中で逆らうなど愚の骨頂。
 逃げども追ってくる生きたお湯に、上から降り注ぐシャンプーの雨。
 さらには空飛ぶ無数のブラシの襲撃によって全身をモミクチャにされ、おそらく普通におとなしく洗われていたほうが100万倍はマシであろう経験の末に現在に至る。

「さてと、蟹の注文も終わったし。 これからひと働きしますか」
 携帯電話に酷似した通信機をテーブルに置くと、キリアは服の袖を肘まで捲り上げた。
 そしてグッタリとしている三匹のケットシーに向かい、ニヤリと不吉な笑みを向ける。

「その前に、こいつらの処置をしないとね」
 ゾクッ
 背筋を襲った強烈な悪寒に、三匹はお互いの体を抱きしめあってガクガクと震えることしか出来なかった。

「……動くな」
 その言葉に従い、隷属の首輪の呪力がケットシーたちの体を縛り上げる。
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