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おいでませ魍魎盒飯店
Episode 1 転生乙女は妖精猫を三度断罪す
罪人来たりて蟹を食う
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ようにして木目の中に埋もれてゆく。

「ど、ドアが無くなったニャ!? どうするニャ、ポメ兄!!」
「どうしよう!? ドアがないのでは門の神に祈っても開けようが無いニャァァ!?」
 だが、別の逃げ口を探して振り返った先にあったのは、高い窓から差し込む光を背にした影法師。
 その不吉な影は、恐怖に震えるケットシーたちを見下ろすと、三日月のような笑みを浮かべて囁いた。

「もう一度聞く。 ……遺言はすでに考えたか?」
 絶望の言葉を紡ぐ唇からこぼれる白い歯が、そこだけやけに白く輝いて見えた。

 ……キシッ、キシッ。
 そして規則正しい床板の軋みと共に、小柄な少女の影がケットシーたちに忍び寄る

「は……はわわわわ……た、助けてニャ」
「ご、ゴメンなさい! 食べたカニは弁償するニャァァ!」
 目と鼻から大量の液体を垂れ流す二匹を前に、少女は触れた瞬間に真冬の寒さがよみがえりそうな笑みを浮かべた。

「それが遺言か? ずいぶんと惨めな台詞だな」
 その手には、錆色に輝く金属製のハエ叩き。
 キシリアが軽くその獲物を振りかざすと、ヒュッと小気味良い音が響いた。

 ハエ叩きと侮るなかれ。
 高位のシルキーともなれば、ハエ叩きの一撃でワイバーンを地面に叩き落し、モップで仕事をサボる魔王を野外に弾き飛ばし、その箒は勇者の股間を容赦なく粉砕するという。

「お、お願い……ぶたないで」
「な、なんでもするニャアァァ……」
 プルプルと涙を浮かべて哀願する様は、動物好きならば思わず全てを許しそうになる光景であるが、キシリアは冥府の裁判官を思わせる笑みを浮かべてこう宣言した。
「……判決。 2時間お風呂尽くしの上、3年の強制労働の刑に処す」



「「みぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」
 その日、その雑貨屋からは三匹分の悲鳴が日暮れまで響き続けたという。
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