Episode 1 転生乙女は妖精猫を三度断罪す
罪人来たりて蟹を食う
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保存しておいたバターが完全に酸化している。
こんなモノを使ったら、あのやたらとミルクの味にうるさいゴブリンたちが黙っちゃいないだろう。
どう考えても食材の補充が終わるまで店を閉めるしかないな。
罪を憎んで人を……いや、ネコを恨まず。
だが、罪は罪。
見た目がかわいいからといって。断じて許すわけにはゆかない。
いざとなったら、「原因はこいつらです」といって怒り狂う客の前に生贄を差し出そう。
――というより、欠食魔族の暴動で死ぬのは激しくお断りだ!
拳を握りしめ、決意と共に一歩前に踏み出すキシリア。
だが、立場をわきまえないケットシーたちは責任も取らずにトンズラする事に決めたようだ。
「では、本日はこの辺にしておいてやろう! さらばニャ! にゃははははははははは!!」
その台詞と共に、テリアと呼ばれたロシアンブルーに似たケットシーの周囲にダークグレーの球体がいくつも産まれる。
そして次の瞬間、パパパパーンと爆竹を鳴らすような音と共に、ダークグレーの球体が弾けて大量の煙を吐き出した。
「くっ、理力か!!」
"理力"とは魔物たちの持つ不思議な力であり、魔法でも魔術でもないのに様々な超常現象を引き起こす能力である。
どうやら、あのロシアンブルーのケットシーは煙球を呼び出すか瞬時に作り出す理力を持っているようだ。
まさに怪盗にふさわしい力……と感心している場合ではない。
この煙の中では、視覚は役に立たないだろう。
キシリアは思い切って目を閉じた。
そして自らの理力をもって周囲の床板と自らの"触覚"を同化させ、針の落ちる感触すらも逃すまいと意識を澄ませる。
ざわり……
すると、一瞬ではあるが、キシリアの体のすぐ横を何かが通った。
「そこだ! 逃がすか!」
体をクルリと回転させると、キシリアはその気配のあった場所にローリングソバットを繰り出した。
ごすっ!
「ふにゃあっ!?」
あてずっぽうに放った蹴りだが、つま先が何か柔らかいものに触れた感触が伝わる。
よし、一匹仕留めたか!?
獲物が起き上がる気配は無い。
どうやら気絶しているようだ。
だが、安心するにはまだ早い。
狩るべき罪人はまだ二匹も存在しているのだから。
「マル兄!」
「テリア! 今は逃げるのが先決ニャ! 兄者は後で取り返すニャ!!」
マルの悲鳴に取り乱す残りのケットシーだが、その声はどんどん遠くなってゆく。
味方を無視して逃げるその選択は、冷徹ではあるが間違ってはいない。
「だが……その程度で逃げられるとでも思ったか?」
急速に薄れてゆく煙の中、キシリアは不適に微笑む。
「どうやら知らないようだな。 お前らは最初から自分の手の中にあるこ
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